名古屋の葬儀担当者の触れた物語 39

洗い物をしていました。誤って落として砕け散る破片。
当然、掃除をします。大きな欠片を拾い、掃除機を用いて、最後は粘着テープで念入りに。
しかして、翌日歩いていると、ちくりと痛みが足の裏に走ります。
小さな欠片が煌めいています。
昔の私なら、苛立ったかもしれません。なんだよ、と。
ついてないな。とつぶやいたかもしれません。
その時私は、こう思えました。咄嗟に。
家族の誰かじゃなくてよかったな。俺でよかった。
もちろん自己犠牲とか、崇高なものではありません。
ただ、咄嗟に、自分以外を案じることができ、安堵した自分を嬉しく思います。

この仕事をしているからか、父親になって10年以上経つからか、
はたまたただ偶然に思いついただけ。かもしれません。
なにしろ、そんな小さなことに幸せは見つけていくものではないでしょうか。

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