名古屋の葬儀担当者の触れた何某2

西田葬儀社の浅井です。

今日は敬愛してやまない伊坂先生の作品「終末のフール」より
以前もお話した記憶がありますが、年老いて同じことを繰り返すおじさんの話を聞いてください。

あと三年で世界が終わる。そんな世界の短編集です。
明日でも一週間後でもなく、三年後。はっきりと数字で突き付けられた現実ではあるものの、
まだ三度季節が変わるのを感じられる、そんな期間を限定されたとき。人はどうするのかという物語です。
親子の、夫婦の和解であったり。あるいは復讐であったり、恋であったり。
伊坂先生らしく、重い話ではなく、心温まる作品です。

三年後に、いやさ明日自分の世界が終わるとしたら、何をしますか?
大切な人に会いにいきますか?
美味しいものを食べますか?
作中にでてくる人の答えは清々しいほど納得のできる明確なものでした。

作中でてくるキックボクサー苗場さんはとても強い人です。
文字通り心身共に。
彼は苦しくなったとき、自分に問いかけるそうです。
練習中に。とてもつらい、自分を追い込む時。試合中とても敵わないと思わせる相手と闘った時。
人は逃げたくなるものです。本能的に。頭が、心が命じます「逃げろ。逃げてしまおう。よくやったじゃないか」
そんな時、苗場さんは自分に問いかけます。

「おい俺。俺は、こんな俺を許すのか」

練習を投げだす俺を。相手に負けて這いつくばることを選ぶ俺を。

そんな風に自分を律することができる苗場さん。彼は三年後に世界が終わるとして質問されます。
どうしますか?世界は終わります。
彼は答えます

「なにも変わりませんよ」「例えば、明日死ぬとして生き方が変わるんですか」

続けて、聞かれた相手に質問を返します。
・・この質問をこそ、私は、皆さんに伝えたい。そして聞いてみたい。

「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」


葬儀担当をしていると、よりリアルにこの言葉が胸に響きます。

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