独居の方が安心して葬儀や供養を行う方法

一人暮らしの高齢者が増えています。内閣府が行なった令和3年版の高齢社会白書によると、65歳以上の一人暮らしの割合は男女ともに年々増加傾向にあります。家族や親戚が遠方にいるという人、生涯独身で過ごしているなど、その内情はさまざまですが、独居の方が亡くなってしまった場合、葬儀はどのように進んでいくのでしょうか。
この記事では、独居の方のお葬式の流れや葬儀後の手続きについて、さらには安心して最期を迎えるために元気なうちに手がけられることについて解説いたします。

基本は、身内が葬儀をする

基本的な考え方として、身内が遺体を引き取り、葬儀をします。実際に、役所や警察は、まずは戸籍をたどり、故人の家族や親戚から連絡を入れます。もしも故人に身内がいない場合、あるいは家族や親戚がいたとしても引取を拒否した場合も、故人の友人や知人、あるいは近隣の人たちが葬儀を行うことも不可能ではありません。死亡届の届出人も、親族以外に次に挙げる人たちが認められています。

●親族
●同居者
●家主、地主、家屋管理人、土地管理人等
●後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者

身内や知人がいない場合

もしも、故人に身内や知人がおらず、遺体を引き取ってくれる人がいない場合や、全くの身元不明の場合は、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律に則って、故人が亡くなった場所の自治体が火葬をします。火葬後、自治体が遺骨を預かったまま、引き続き遺族や親類を探します。それでも引き取り手が見つからない場合は、一定の保管期間を経て、自治体の公営霊園や提携しているお寺の「無縁塚」に埋葬されます。
身寄りのない人の火葬や埋葬にかかる費用は、故人に財産があればそれを充てます。また、健康保険の給付金制度(国民健康保険の「葬祭費」や社会保険の「埋葬費」など)や、生活保護受給者の葬祭扶助制度などを利用して葬儀費用に充てることもあり、最終的には自治体が立て替えます。もしも、あとから法定相続人や扶養義務者が見つかった場合はその者に費用請求します。

独居の方が亡くなった時の葬儀の流れ

独居の方が亡くなった場合、葬儀はどのような流れで進んでいくのでしょうか。故人の家族関係や交友関係、亡くなった時の状況などによってさまざまですが、一般的な例をご紹介いたします。

ご逝去
ご逝去時の対応は、亡くなった場所によって対応が変わります。

▶病院や施設で亡くなった場合
病院などで医師の診断のもと息を引き取った場合は、医師が「死亡診断書」を発行します。そして遺体を引き取ってくれる家族や親族に連絡が入ります。

▶自宅で亡くなった場合
自宅で亡くなり、発見までに時間がかかってしまった場合、事件性の有無や死因の究明のため、警察署員や警察医による「検案」が行われ、その後「死体検案書」が発行されます。警察が介入するため、一連の手続きが終わるまで、遺体を引き取ることができません。

いずれのケースでも、遺体の引き取り手がいる場合は、その人が葬儀社に連絡して搬送を手配します。もしも引き取り手がいない場合は、いったん自治体が葬儀社を通じて遺体を引き取ります。

葬儀・火葬
故人を見送る親族や知人がいれば、その人たちが望む形でお葬式を執り行います。通夜や告別式のようなセレモニーのあるお葬式や、火葬だけを行う直葬など、どのようなスタイルでも構いませんが、これらの費用はすべて喪主が負担します。
もしも身内がおらず、自治体が遺体を引き取った場合は、故人の財産、給付金制度、公費の充当などによって火葬のみが行われます。いわば税金が充てられるわけですから、必要最低限の火葬となるわけです。

供養・埋葬
親族や友人知人が葬儀を行った場合、その人が希望する場所に埋葬ができます。もしもあとを見る人がいるならば、ご先祖様と一緒に埋葬してあげるのがよいでしょう。将来的にお墓を守る人がいなくなる場合、納骨堂や樹木葬といった、墓じまいの心配のない方法を選びます。
身内がいない場合は、自治体が火葬をし、遺骨を一定期間保管します。その間も遺骨の引き取り手となる家族や親戚を探し、連絡を入れますが、それでも引き取り手が見つからない場合、あるいは引き取りを拒否された場合は、その自治体の霊園や提携するお寺の「無縁塚」に埋葬されます。

安心な最期を迎えるために元気なうちにしておくべき「死後事務委任契約」

ここまで見てきたように、身内がいるかいないかによって、逝去後の葬儀や供養に大きな差ができますが、たとえ家族や親戚がいなくても、友人や知人に自身の葬儀やその後の供養を託すことができます。

「親戚や身内がいないけど、安心して最期を迎えたい」

こうした希望を叶えるためにおすすめなのが、「死後事務委任契約」です。なんだかこむずかしい契約のように聞こえますが、要は、葬儀や供養など、死後のもろもろの手続きを信頼できる相手に委任することを、事前に契約しておくことです。繰り返しになりますが、この契約相手は、家族や親戚である必要はありません。信頼のおける友人や知人、あるいは弁護士などの法律の専門家にすることもできるのです。

トラブル防止のために契約を交わす
どうして、この死後事務委任契約がおススメなのでしょうか。
たとえば、あなたの葬儀を、長年の親友に託したいとし、親友もあなたの葬儀を行ないたいとします。そして実際に葬儀を行うことができたものの、あとから親族が見つかって「どうして勝手に葬儀をしたの?」と苦言を呈され、トラブルに発展する可能性もあります。そうしたことを防ぐために、死後事務委任契約を交わしておくのです。

契約書を公正証書で作成しておく
死後事務委任契約は、役所の制度などでもなく、二者間の約束事です。お互いが両省さえしておけば、口約束でもこの契約関係は成立します。ただし、周りの人から苦言を呈された時に、この二者間の約束を証明するものがある方が安心です。ですから、死後の事務委任を託す、託されることの契約書を作成しておくべきですし、その際は「公正証書」にすることをおすすめします。

公正証書とは、公証人が作成する文書のことです。ちなみに公証人とは法務省の説明によると「判事、検事、法務事務官などを長く務めた法律実務の経験豊かな者の中から法務大臣が任免し、国の公務をつかさどるもの」としています。

公正証書にしておくことで、二者間の契約関係を公証人が証明することになり、法的な紛争を未然に防ぐことが期待できます。

死後事務委任契約でできること
死後事務委任契約を交わしていくことで、葬儀や供養だけでなく、次に挙げるさまざまなことを、信頼できる人に託すことができます。

●親族など、関係者への死亡の通知
●役所への届出(死亡届、戸籍、年金の資格抹消等)
●葬儀に関する手続き
●埋葬に関する手続き
●住居の管理手続き
●各種サービスの解約・精算手続き
●運転免許証の返納手続き
●ペットの引き渡し

最近では、弁護士や司法書士などの法律の専門家も、死後事務委任契約を絡めた終活支援を行っています。葬儀を任せられる友人や知人などもいないという方は、まずは専門家に相談してみるのもよいかもしれません。

いかがでしたでしょうか。これからさらに高齢者人口が増え、孤独死や独居者の葬儀は社会課題となるものと思われます。まずは元気なうちから、家族、親戚、友人知人など、自分の最期を託したい相手に想いを伝えておくことが大切になってくるでしょう。
そして、分からないことは専門家に相談して適切な知識を得ることが大切です。お葬式に関する疑問やお悩みがある方は、どうぞ西田葬儀社にご相談下さい。

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