「友引にお葬式をすべきでない」とよく耳にしますが、そもそも友引とは何なのか、どうして友引に葬儀をしてはいけないのかなど、その意味や由来をご存じですか?
「早く葬儀をしたいけど、友引に重なるから日程を延ばさないといけないのかな?」
「友引に葬儀をすると縁起が悪いのかな?」
このように悩まれている方に向けて、この記事では、友引とは一体何なのか、友引の日に葬儀をしない方がいい理由、さらには葬儀日程の決め方について、詳しく解説してまいります。
友引とは六曜のうちのひとつ
まずは、友引について、基本的な知識を押さえておきましょう。
カレンダーを見てみると、「友引」以外にも「大安」や「仏滅」などの文字が見られます。これらは「六曜(ろくよう)」と呼ばれ、日本で最も有名な暦注です。ちなみに暦注とは、日時や方位などから吉凶や運勢を占うもので、六曜以外にも、二十八宿、九星などがあります。
そして六曜ですが、友引、仏滅、先勝、先負、大安、赤口の6種類あります。古代中国で生まれたとされており、日本にやって来たのが14世紀の鎌倉時代のころで、江戸時代に入り、庶民に広く普及したと言われています。
「結婚式は大安がいい」
「友引は葬儀にしない方がいい」
…というような俗信をよく耳にしますが、まずは六曜それぞれにどんな意味があるのかを解説いたします。
●先勝(せんしょう・さきがち)
先勝の日は、午前中が吉の日です。そのことから、何事においても先手を打つことがよい日とされています。
●友引(ともびき)
そもそもは、勝負事において「共に引き分ける」という意味で、良くも悪くもない日とされていました。これがいまでは「友を引っ張る」という意味に変わりました。友引に葬儀をすることで周りにも不幸が続くかもしれないと考えられ、葬儀を避ける日として捉えらえています。ちなみに祝い事は問題なく行えます。
●先負(せんぶ・さきまけ)
先勝とは反対で、午前中が凶、午後を吉の日です。そのため、急用を避け、何事も丁寧に慎重にするべきとされています。
●仏滅(ぶつめつ)
六曜の中で最も運勢の悪い大凶日です。何事もよくない日とされ、あらゆることを控えるべき日と考えられています。特に結婚式などを避ける傾向にあります。もとは「物滅」という字があてがわれていたところ、仏の功徳すらないという意味に転じて「仏滅」と言われるようになったそうです。
●大安(たいあん・だいあん)
六曜の中で最も運勢のいい大吉日です。「泰安」から転じているとされ、何事においても良い日とされています。結婚式や住宅の建前の日取りに好んで選ばれており、その他にも、自動車の登録日や納車日、建物の基礎の着工など、大切な行事を大安に設定する人は少なくありません。もちろん葬儀や法事を行なっても構いません。
実は仏教と関係のない六曜
大安や友引などの六曜も仏教的なものだと捉える人も少なくありませんが、実は仏教と六曜はあまり関係がありません。
仏教を開いたお釈迦様は、当時インド社会で公然と行われていた神秘的なものや占術的なもの(呪術、夢占い、人相占い、星占い、鳥占い、懐妊術など)を否定しました。苦しみからの解放は、自分自身と向き合うことにあるからと考えたからです。
日本では浄土真宗の開祖である親鸞聖人も…
「かなしきかなや道俗の良時吉日えらばしめ天神地祇をあがめつつト占祭祀つとめとす」
…と、日の吉凶を占うことの無意味さを説いています。
吉凶を気にする日本人の気質
ちなみに、明治新政府が暦を現在の太陽暦に変える時に「吉凶付きの暦注は迷信である」と、カレンダーに六曜などの暦注の掲載を禁止したにも関わらず、民衆側から反発が起きたというエピソードがあります。
日本人はどうしてここまで暦注を好むのでしょうか。
その理由は定かではありませんが、古代より森羅万象に霊魂が宿ると信じてきた日本人です。
自然を恐れ、そして敬う思いから、自然現象や天体の運行などに法則性や根拠を見出したい
と考えてしまうのではないかと思われます。
「友引なんて根拠がない」と、頭では分かっていても、心のどこかで「でももしも見えないものの力で万が一の事が起きてしまうと…」と思ってしまうものです。あるいは、本当によくないことが起きた時に、「その原因は友引にある」ということにしておけば、とりあえずその原因が分かり、心が落ち着くというものです。友引と葬儀の関連を見るだけでも、日本人がいかに目に見えないものの力を畏れ、信じているかが分かります。
逆を言えば、大安に結婚式を挙げるのは、その後の幸福を心から祈るからであり、友引に葬儀を避けるのも、その後の死者の冥福や遺された人たちの穏やかな日々を心から祈るからに他なりません。
友引に葬儀をしていいの?
さて、ここまで友引の由来やその意味について解説してきたわけですが、では、友引の日に葬儀をしてもよいのでしょうか?
結論から言うと、「友引に葬儀をしても構わないが、多くの人は避けている」というのが実情です。
私たち西田葬儀社がある名古屋市の場合も例外ではありません。市内の2つの市営斎場(八事斎場と第二斎場)は交互に友引の日を休業日としています。友引であってもいずれかは稼働しているため、葬儀や火葬は実施可能ですが、それでも友引の葬儀を避ける傾向にあります。弊社でも友引の葬儀や火葬はほとんど前例がありません。
地域によっては、すべての友引の日を火葬場の休業日としているところもあり、その場合、必然的に友引に葬儀や火葬ができないことになります。
また逆に、友引でも葬儀や火葬ができるよう、「友引人形」を用いる地域もあります。棺の中に友引人形を入れてあげることで、人形が身代わりになり、周囲の人を道連れにしないと考えられているのです。
友引のお通夜は問題ない
友引の日に通夜を営むのは問題ないとされています。
お葬式は主に、通夜と葬儀・告別式を2日にまたいで行いますが、通夜はお別れの時間、葬儀は故人をあちらの世界に送り出す儀式として捉えられています。このことから、友引にお通夜をしても道連れにされることはないと考えられているのです。
友引が重なった時の葬儀日程の決め方
葬儀日程は、次の4つを調整しながら決めていきます。
喪主や親族の希望
お坊さんの予定
火葬場の空き状況
葬儀式場の空き状況
これら4つを満たす日時を、葬儀社を交えて調整します。
友引が重なる場合は、1日ほど延ばして日程を組むことが多いです。葬儀に日取りが先延ばしになることを嫌がる人も少なからずいますが、メリットとして…
故人様にゆっくりと寄り添える
打合せや訃報連絡を余裕をもって行える
参列者も無理せず来場できる
...などがもたらされます。
ご遺体の状況が気になるという方もおられると思いますが、ドライアイス等を用いてきちんとご遺体の保全に努めます。1日や2日程度延びるくらいであれば、まず問題はないでしょう。
また逆に、どうしても早く葬儀を終えたい場合は、友引よりも手前で葬儀を実施することもあります。対応できるかどうかは状況によりますので、まずは葬儀社に相談してみましょう。
友引は、故人様の冥福を悼み、「これ以上不幸が広がらないように」という遺された人たちの切なる想いがしきたりとなったものです。友引を気にして葬儀を避ける方、中には迷信だとして気にしない方など、友引の受け取り方もさまざまです。自分たちが不安に思うことなく、納得いく形で大切なご家族を送り出したいですね。