ご葬儀の前後にしなければならない届け出・手続きを滞りなく行うには?

大切な方を失った悲しみでショックが冷めやらぬ中でも、速やかに行わなければならないことがあります。
一般的に葬儀社が行ってくれるものから、ご家族で行わなければならないものまであります。
今回はご葬儀後に行わなければならない様々な手続きを解説いたします。

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葬儀社が代行してくれるもの

死亡届

医者によって書かれた死亡診断書、または警察による死体検案書と届出人の印鑑を持ち、死亡地か本籍地の戸籍住民登録を行う市町村役場で申請します。
これは死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなった場合は3ヶ月以内)が期限ですので注意が必要です。

火葬・埋葬許可証(分骨証明書)

死亡届と同時に届け出を行います。
自治体に交付される火葬許可証がなければ火葬はできません。
火葬許可証はご遺体を火葬する際に火葬場の管理事務所に提出し、荼毘に付された後、火葬を証明する印が押されて埋葬許可証として返却されます。
埋葬許可証は墓地や納骨堂にご遺骨を収める際に必要な許可証ですので、紛失しないように気をつけましょう。
また分骨する場合は分骨証明書が人数分必要なので、火葬場に追加で発行してもらう必要があります。
ご遺骨をどのようにするか予め家族で話し合っておくとスムーズでしょう。

ご家族が行わければならないもの

2週間以内に手続きが必要なこと

住民票末梢届

亡くなった方は住民票から削除する必要があるため、提出される届け出です。
ただし通常は死亡届の提出とともに削除されるため、対応する必要はありません。

年金受給停止

亡くなった方が年金を受け取っていた場合は受給停止の手続きが必要です。
ねんきんダイヤルや最寄りの年金事務所に連絡をすれば、必要な手続きについて説明を受けられます。

介護保険被保険者証の返却・介護保険資格喪失届

介護保険被保険者証が交付されていた方は、交付していた自治体の市町村役場に介護保険資格喪失届を提出し、返却しなければなりません。
なお、喪失届を提出する際には印鑑が必要です。

世帯主変更届

故人様が世帯主の場合、世帯主変更届を提出する必要があります。
ただし残る世帯員が一人の時は提出しなくてもよい(世帯主を変更しなくてもよい)など、自治体によって違うことがあります。
詳しくは市町村役場の窓口に問い合わせましょう。

国民健康保険の脱退

国民健康保険証も速やかな返却が必要です。
亡くなった方の住所の市町村役場の保険年金課で手続きを受けられます。

国民健康保険の葬祭費用の請求(2年以内)

国民健康保険の被保険者が死亡した場合は葬祭費の助成が受けられます。
保険証返却の際にご葬儀が済んでいれば、併せて提出できます。
ただし受け取れる葬祭費の金額は自治体によって異なります。
詳しくは市町村役場の窓口に問い合わせましょう。

1か月から5年以内に手続きが必要なこと

雇用保険受給資格者証の返還(1ヶ月以内)

雇用保険受給資格者証は雇用保険に加入した人へ発行される証明書です。
故人様が受給していた場合は、受給手続きを行ったハローワークへ1ヶ月以内の返還が必要です。
また雇用保険の受給資格が決定した後に受給者が亡くなった時、生計を共にしていたご遺族は未支給失業等給付という制度で、亡くなった前日までの失業給付が受け取れます。
こちらの請求期限は6ヶ月以内で、同じハローワークで申請できます。

相続放棄(3ヶ月以内)

相続放棄とは、被相続人(故人様)の財産に対する相続権をすべて放棄する手続きです。
財産とは預貯金・貴金属・不動産などプラスの財産の他に、借金や債務などマイナスの財産もあります。
相続放棄をするとプラスの財産が受け取れないかわりに、マイナスの財産も放棄することができます。
これを行う時は住所地から最寄りの家庭裁判所で申述します。
申述期限は相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内です。

Tips:相続の開始とは

相続するべき財産の所有者が空白になってしまうことを防ぐため、相続の開始は人が亡くなった瞬間に、相続人が被相続人の逝去の事実を知っていたかどうかに関わらず発生します。
このため、通常は相続の開始があったことを知った日=故人様の亡くなった日ということになります。

この期限を過ぎてしまった場合は、原則として相続放棄ができなくなります。
相続の問題はトラブルが多くなりやすいので、スムーズに対応できるように予め話し合っておくことが大切です。
申述に必要な書類・手順は裁判所のウェブサイトをご確認ください。

参考:裁判所【相続の放棄の申述】

所得税準確定申告・納税(4ヶ月以内)

所得税準確定申告とは、亡くなった方に所得があった時に必要な手続きです。
確定申告をしなければならない方が年の途中で亡くなった場合、または年が明けて申告前に亡くなった場合は申告未了となってしまいますので、相続をする人(遺産の全部または一部を受け取る人)が申告・納税しなければなりません。
こちらの申告・納税の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。

相続人が複数いる場合は相続人の代表者を決めて連署にし、ひとまとめに提出する方法と、相続人それぞれに準確定申告書を作成して提出する方法があります。
複数人で提出する場合は申告内容をお互いに確認し、それぞれに申告が異なることがないように気をつけましょう。
なお、亡くなった方に所得がなかった(確定申告の必要がなかった)時は、この手続きの必要はありません。
どのような方が確定申告の対象になるかは国税庁のウェブサイトをご確認ください。

参考:国税庁【確定申告が必要な方】

相続税の申告と納付(10ヶ月以内)

相続放棄せず故人様から財産を相続する時、相続人は相続税の申告と納付を行う必要があります。
相続税はおおむね以下のようなものに課せられます。

相続税の課税対象となるもの(一例)

○土地・家屋・建造物(家・ビル・駐車場・山林・田畑など)
○預貯金・有価証券・貴金属類・骨董品類
○自動車・バイク
○権利(著作権・特許権など)
○事業用・農業用財産(商品・農作物など)

ただし相続税は全ての人に課税されるとは限りません。
基礎控除額3,000万円+600万円×法定相続人の数(例:法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円)に加え、以下の条件に該当する方には特別な控除が設けられており、相続財産の総額が控除額を下回る時は申告の必要はありません。

1.贈与税額控除
相続・遺贈・相続時精算課税にかかる贈与によって財産を取得した人が、被相続人が亡くなった日から3年以内に財産を贈与され贈与税を支払った場合、一定の金額が控除されます。
2.配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が財産を受け継いだ場合、法定相続分が1億6,000万円以下であれば無税となります。
3.未成年者控除
相続人が20歳未満の未成年者かつ法定相続人の場合、20歳に達するまでの年数に応じて1年につき10万円が控除されます。
4.障がい者控除
法定相続人が障がい者の場合、85歳に達するまでの年数に応じて1年に月10万円(特別障がい者の場合は1年につき20万円)控除されます。
5.相次相続控除
相続が10年以内に再びあった場合、期間に応じて一定の金額が控除されます。
6.外国税額控除
海外にある財産を受け継いだ時、その国に相続税を納付している場合は一定の金額が控除されます。
7.相続時精算課税分の贈与税控除
相続時精算課税制度を選択していて贈与税を支払った場合、相続税が控除されます。

相続税は受け継ぐ財産の総額によって税率が大きく異なりますので、正確に資産を評価・算定する必要があります。
しかし土地や権利など、所有関係が複雑になっていて資産評価が難しいものもあります。
この申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内ですが、期限内に申告が完了できないと上記の特別な控除が受けられなかったり、追加の税が課されたりすることもあります。
資産の把握や評価が終わらない、遺産の分配が決まらないなど、相続には様々なトラブルがつきものです。
これを回避するためには予め目録を作っておくこと、相続人同士でよく話し合っておくことなどが大切です。

国民年金の死亡一時金の請求(2年以内)

死亡一時金とは、亡くなった日の前日までに国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けることなく亡くなった時、生計を共にしていたご遺族が受け取れるものです。
住所地の市区町村役場、または最寄りの年金事務所で手続きできます。
提出時に必要な書類は日本年金機構のウェブサイトをご確認ください。

参考:日本年金機構【死亡一時金を受けるとき】

健康保険加入者埋葬料の請求(2年以内)

埋葬料は社会保険等に加入していた方が亡くなった時、故人様を埋葬する方が埋葬に要した費用として5万円まで受け取れます。
こちらは配偶者や親族以外でも、埋葬を行った方であれば請求することができます。
また被扶養者が亡くなった時も、被保険者は家族埋葬料として同じように5万円まで受け取れます。

似たような制度で国民健康保険の葬祭費もありますが、埋葬料と葬祭費は別物です。
退職などで社会保険を喪失し、国民健康保険に加入していたとしても、喪失から3ヶ月後までは埋葬料が支給されますので、埋葬料と葬祭費を両方受け取ることはできません。

労災保険の葬祭料請求(2年以内)

業務災害によって亡くなった場合は労災保険の葬祭料を請求することができます。
受け取れる葬祭料の支払額は315,000円+給付基礎日額の30日分です。
この金額が給付基礎日額の60日分に満たなかった場合は、給付基礎日額60日分が支払われます。
通常はご遺族が受け取りますが、身寄りのない方が亡くなった時などに会社や友人がご葬儀を行った場合は、親族でなくてもご葬儀を行った方・会社が受け取れます。
所轄の労働基準監督署で手続きをしましょう。

生命保険の死亡保険金請求(2年以内)

加入している生命保険によっては死亡保険金を受け取れることがあります。
契約者または受取人の方は保険証券を確認し、生命保険会社に連絡しましょう。

国民年金の遺族基礎年金の請求(5年以内)

遺族基礎年金とは、国民年金に加入されていた方が亡くなった時、その方によって生計を維持されていた18歳未満の子(障害がある子の場合は20歳未満)がいる配偶者、または子が受け取れるものです。
住所地の市区町村役場、または最寄りの年金事務所で手続きできます。
提出時に必要な書類は日本年金機構のウェブサイトをご確認ください。

参考:日本年金機構【遺族基礎年金を受けられるとき】

厚生年金の遺族厚生年金の請求(5年以内)

遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者中または被保険者だった方が亡くなった時、その方によって生計を維持されていたご遺族が受け取れるものです。
上記の遺族基礎年金とは別の制度ですので、受給条件が満たされる時は併せて受け取れます。
住所地の市区町村役場、または最寄りの年金事務所で手続きできます。
提出時に必要な書類は日本年金機構のウェブサイトをご確認ください。

参考:日本年金機構【遺族厚生年金を受けられるとき】

労災保険の遺族補償給付請求(5年以内)

遺族補償給付とは、業務災害によって亡くなった時にそのご遺族が受け取れるもので、遺族補償年金と遺族補償一時金があります。

遺族補償年金

遺族補償年金は亡くなった方によって生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹に受給資格があります。
ただしこれには以下の優先度があります。

1.妻または60歳以上か一定障害の夫
2.18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子
3.60歳以上か一定障害の父母
4.18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
5.60歳以上か一定障害の祖父母
6.18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
7.55歳位以上60歳未満の夫
8.55歳位以上60歳未満の父母
9.55歳位以上60歳未満の祖父母
10.55歳位以上60歳未満の兄弟姉妹

遺族補償年金は遺族数(受給権者および受給権者と生計を同じくしている受給資格者の数)などに応じて支給されます。
給付される内容は以下のとおりです。

○遺族補償年金


Tips:給付基礎日額とは

給付基礎日額とは、労働基準法の平均賃金に相当する額のことです。
平均賃金とは原則として業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナス等を除く)を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額です。

○遺族特別支給金
人数に関わらず、一律300万円

○遺族特別年金


Tips:算定基礎日額とは

算定基礎日額とは、原則として業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日以前の1年間に、その労働者が事業主から受けた特別給与の総額を算定基礎年額として365で割った額です。
(特別給与とは給付基礎日額の算定から除外されているボーナス等の賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません)

遺族補償一時金

遺族補償一時金は、次のいずれかの場合に支給されるものです。

1.被災労働者の死亡当時、遺族補償年金を受けるご遺族がいない場合
2.遺族補償年金の受給権者が最後順位者まで全て失権した時、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額および遺族補償年金前払一時金の合計額が、給付基礎日額の1,000日分に満たない時

これの受給資格者は次にあげるご遺族のうち、最先順位者です。
同順位者が2人以上いる場合はそれぞれ受給権者となります。
(なお、これらの身分は被災労働者の死亡当時の身分です)

1.配偶者
2.労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
3.その他の子・父母・孫・祖父母
4.兄弟姉妹

遺族補償年金に関する手続き先は、いずれも所轄の労働基準監督署です。

各種名義変更

・不動産
・預貯金(銀行口座)
・有価証券
・自動車・バイク
・加入電話(固定・携帯)
・公共料金 など

また他にも
・パスポートは都道府県旅券課へ
・運転免許証は最寄りの警察署へ
死後速やかに手続きに行かなくてはなりません。

まとめ

ご家族が亡くなられた後、想像以上に手続きと届出が必要です。
ショックを受けている時にこれら全てをいきなり行うのはとても大変なので、終活を通してある程度は家族で話し合って把握しておくことが大切です。
また葬儀社が税理士・行政書士などと連携したアフターフォローサービスを提供していることもあります。
困ってしまった時は一人で抱え込みすぎず、葬儀社に相談してみましょう。

  • B!