世の中の人々の中には、自分が病気で死亡した場合には医科大学へ自分の遺体を献体し、医学生たちの研修の役に立ちたいと考えている方が増えてきました。
自分の遺体を大学に献体したいと望む場合には通常、家族から同意を得る必要があるため、亡くなった時点で献体について家族が驚くケースはあまりありません。
しかしご葬儀の手順については、どのように進めていけばよいのか戸惑う方は多いのではないでしょうか?
今回は故人が献体登録されていた時のご葬儀の流れについて解説していきます。
[st_toc]
そもそも献体ってどんなこと?
献体とは医術・医学の発展を願い、解剖学の実習・研究において必要な教材として自らの遺体を無条件・無報酬で提供することです。
冒頭で記したとおり、医学生たちの役に立ちたいという思いから献体を望む方が少なくありませんが、登録にあたっては親族の同意を必要とします。
(亡くなった時、この登録時に同意した親族が1人でも反対した場合、献体は行われません。)
では献体登録されている時のご葬儀において、気をつけるポイントはどのようなことがあるのでしょうか?
亡くなった時、しなくてはいけないこと
献体登録されている大学・団体への連絡
まずご本人が亡くなった直後に献体登録していた大学や団体へ、亡くなった事実を連絡する必要があります。
この時に大学・団体とご遺族との間で、葬儀日程や遺体引き取りについて打ち合わせをすることになります。
この連絡は葬儀社への連絡より優先されますが、ご葬儀の段取りが全然わからないままではスムーズに話が進みません。
献体登録なさっている方、またはその身内の方は葬儀社と事前相談しておくことを強くおすすめします。
移送先・ご葬儀の選択
献体登録されている際のご葬儀については、各ケースにおいて注意するポイントがたくさんあります。
ご葬儀後に献体するケース
防腐処理等の理由から大学・団体は通常、亡くなってから48時間以内の遺体受け入れを求めます。
このためご葬儀後に献体する場合は48時間以内に通夜・告別式を終えなければならず、タイトなスケジュールになりやすいことに注意が必要です。
またご遺体はご葬儀のため、一旦葬儀会館や自宅に移送する必要があります。
葬儀社のスタッフには葬儀終了後に献体することを伝え、念入りに処置してもらいましょう。
献体後にご葬儀を行うケース
献体前にご葬儀を行わない時は、直ちに大学・団体に献体することが可能です。
(夜間など、一時的にご安置が必要な場合もあります)
このケースのご葬儀には2つのポイントがあります。
ご遺体なしでご葬儀を行うケース
献体を引き取ってもらった後なら48時間という時間の制約がないため、ゆっくりと式典を進行したり、関係者への連絡をすることができます。
ただしご遺体がないため式において拝顔したり、通夜などで最後のお別れを言うことはできません。
ご遺骨の返還を待ってからご葬儀を行うケース
献体は実習・研究などに供された後、大学・団体によって火葬され、ご遺族の元にご遺骨が返還されます。
しかし返還されるまでの期間は大学・団体によって差があり、通常1~2年程度、長い場合は3年以上を要することもあります。
これを待ってからご葬儀を行うことも可能ですが、その間は心身の整理をつけにくいというデメリットがあります。
いずれの大学においても献体された方のために慰霊祭が毎年行われています。
ご遺骨を待つ間、こういったイベントに参加することも一つの手段です。
献体についてよく間違ってしまうポイント・注意点
大学病院に問い合わせてしまう
献体を引き取るのは医科・歯科大学であり、大学病院ではありません。
同様に献体の登録・申込み先についても地域の大学、または献体の篤志団体が請け負っています。
献体は有料?
献体は無条件・無報酬で提供することであるとともに、その費用が請求されることはありません。
献体についてなんらかの費用を請求する大学・団体はありません。
葬儀費用は大学・団体が負担してくれる?
大学・団体が負担してくれるのは献体の移送費・火葬料のみです。
献体の移送費とは病院・自宅などから大学へ移送する際の【引き取り時】であり、ご葬儀を行う際の自宅や葬儀会館への移送費は含まれません。
葬儀費用についても通常通り、ご遺族が全額負担します。
火葬料の分だけ葬儀費用が安くなるのは事実ですが、そういった目的を主眼にすると
・ご葬儀の手順が通常に比べて煩雑・慌ただしくなる
といったデメリットの方が大きくなってしまうので、やめておいた方がいいでしょう。
まとめ
普段はあまり聞くことのない「献体」というキーワードについての解説、いかがだったでしょうか?
献体は医学・医術の発展に欠かせない大切なことですが、その対応をしなければならないのはお身内の方です。
せっかく登録を済ませておいても誰かに反対されたり、時間的制約などに阻まれて献体ができなくなってしまうケースもあります。
どんな思いや考えで献体をするのかよく話し合って、いざという時にトラブルが起きないようにしましょう。