通夜や葬儀・告別式で持っていくべき持ち物は、下記に大別されます。「どの宗教(無宗教を含む)でも共通して持っていくべきもの」「宗教によって違うもの」をそれぞれ解説していきます。
すべての宗教で共通している「通夜・葬儀の持ち物」
「ハンカチ」「袱紗(ふくさ)」「カバン」「不祝儀」は、どの宗教(無宗教を含む)でも共通して持って行きます。
ひとつずつ解説していきます。
●ハンカチ
どのような形態の葬式でも必要になるものです。色は白色あるいは黒色で、無地のものが望ましいといえます。ただし、控えめなレースやワンポイント程度のものならば許容されます。
●袱紗
不祝儀袋を包むためのものです。不祝儀袋は裸では持ち歩かず、必ず袱紗に包みます。弔事用の袱紗は寒色系でなければなりません(慶事用は暖色系)が、紫色の袱紗ならば慶弔どちらにでも使えます。なお風呂敷タイプがもっとも正式ですが、現在は取り出しやすいポケットタイプのものでも良いとされています。
●カバン
いずれの宗教でも、黒色で、光沢がなく、金具のついていないものを選びます。ヘビ革などのように「殺生」を強くイメージさせるものは避けます。布製のものがもっとも望ましいのですが、マナー上は合皮でも問題ありません。ただ現在の合皮は品質が良いため本革と見分けがつきにくいので、新しく買うのであれば布製のものがよいでしょう。
●不祝儀袋
「不祝儀辞退」のご意向が明示されていないのであれば、これを持参します。なお「香典袋」という言い方は現在広く使われていますが、これは厳密には仏教用語です(ここでは「不祝儀袋」と「香典袋」を使い分けていきます)。相手の宗教に合わせた袋・表書きを選ぶのがマナーですが、分からない場合は「黒白の結び切りの水引+御霊前の表書き+無地の封筒」にすればどの宗教・宗派でも対応できます。なお一部の地域ではまれに白と黄色の水引のものを使うことがありますが、ここまで考慮する必要性は薄いといえるでしょう。
仏教の通夜・葬儀に持っていく物について
ここからは、仏教の葬式のときに持っていくものを紹介します。
●数珠
厳密には宗派ごとに違いがあります。ただし、一般の弔問客はもちろん、ご遺族の立場でもこれが問われることはありません。長く使うものなので良いものを求めてもよいのですが、「忘れた!」などのような場合は、100円ショップに駆け込んで購入しても構いません(※葬儀会社のなかには、受付で物販というかたちで売っていることもあります)。
●香典袋
表書きは「御香典」「御仏前(御佛前)」「御香料」です。上では「御霊前はどの宗教でも使える」としましたが、こと「仏教の」葬儀に限る場合は「御霊前」は避けた方がよいでしょう。なぜなら浄土真宗は、死生観の観点から、「御霊前」は厳密にはNGとされているからです。なお仏教の場合は、袋にハスの花が書かれているものを使えます。ハスの花は仏様と関わりの深い植物だからです。また、黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかけるのが基本です。
神道の通夜・葬儀に持っていく物について
仏教に続いて、神道の葬式に参列するときの持ち物について解説します。神道の場合は、数珠は使いません。数珠を使うのは仏教のみです。
なお「相手の宗教が分からない」という場合は、「不安ならば持っていくだけ持って行って、神道の式だと分かったのならばカバンから出さない」というやり方をすれば問題ありません。
不祝儀袋は、黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかける点では仏教と同じです。しかし仏教の花であるハスの花は神道では使えませんから、無地の封筒を選ぶ必要があります。
表書きは「御霊前」「御榊料」「御玉串料」などがよいでしょう。ちなみに「榊」は、神道において非常に重要な植物であるとされていて、神道の葬儀の席でよく用いられます(玉串奉奠など。なお、榊だけで祭壇を作ることもあります)。
キリスト教の通夜・葬儀に持っていく物について
最後に、キリスト教の葬式のときの持ち物について見ていきましょう。数珠は使いません。「ロザリオ」はしばしば「キリスト教における数珠のようなもの」と解説されますが、ロザリオを持って葬式に参列するのは「自分自身もまたキリスト教の信者である」という人だけです。「故人はキリスト教を信仰していたため、葬儀はキリスト教式で行われるが、自分自身はキリスト教の信者ではない」という場合は、ロザリオは持っていきません。そのため、葬儀のためにこれを買い求める必要もありません。
不祝儀袋についても見ていきましょう。キリスト教には多くの宗派がありますが、日本でよく見られるのはプロテスタントとカトリックであるため、この2つを取り上げて解説します。この2つは同じ「キリスト教」に分類されますが、不祝儀の表書きは異なります。
プロテスタント独自の書き方として、「忌慰料」があります。厳密には、プロテスタントの場合は「御霊前」は使いません。カトリックは「御ミサ料」が使えます。なお。「御花料」「御花料」ならば両方とも使えます。不祝儀袋は、白色の無地が原則ですが、黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかけたものでも構いません。また、キリスト教の場合は、十字架やユリの花が入ったものも使えます。同じ「花」であっても、ハスの花が入ったものは使えません。
仏教
特筆すべき持ち物
数珠
不祝儀袋
ハスの花が入ったものが使える。
黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかける
表書き
「御香典」「御仏前(御佛前)」「御香料」
浄土真宗の場合は「御霊前」は避ける
神道
特筆すべき持ち物
なし
不祝儀袋
不祝儀袋は無地のものを使う(ハス・十字架・ユリ、いずれも不可)。
黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかける
表書き
「御霊前」「御榊料」「御玉串料」
キリスト教(プロテスタント)
特筆すべき持ち物
キリスト教信者ならばロザリオ、違う宗教の信徒ならば不要
不祝儀袋
白い無地の封筒を選ぶ。十字架やユリの花が入っているのも使える。
水引は必要ないが、黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかけたものでも構わない
表書き
「忌慰料」「献花料」「御花料」
「御霊前」は避ける
キリスト教(カトリック)
特筆すべき持ち物
キリスト教信者ならばロザリオ、違う宗教の信徒ならば不要
不祝儀袋
白い無地の封筒を選ぶ。十字架やユリの花が入っているのも使える。
水引は必要ないが、黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかけたものでも構わない
表書き
「忌慰料」「献花料」「御花料」
なお、「どの宗教でも『御霊前』は使えるとされているのに、浄土真宗やプロテスタントではNGとされていて混乱する……」という人もいるでしょう。この場合、たしかに浄土真宗やプロテスタントでは御霊前という書き方は避けた方がより良いものの、「御霊前と書いても許容される」と考えて差し支えありません。一般弔問客の立場で、浄土真宗やプロテスタントの式に「御霊前」とした不祝儀を持って行ったとしても、マナー違反を咎められることはないでしょう。
そのため、
「宗派ごとに覚え分けるのが面倒!」「相手の宗教を聞き忘れた……」
という場合は、
・表書きを「御霊前」
・無地の不祝儀袋に、黒白あるいは総銀、もしくは双白の結び切りの水引をかける
・上記を紫色の袱紗に包む
というやり方を守れば問題ありません。