式中の作法・マナー

葬儀の場での挨拶~ケース別・立場別の言葉遣いとその例

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葬儀の場では、だれもが何回か「挨拶」を行うことになります。ただ葬儀は多くの人にとって非日常的なことであるため、「いつ、どのタイミングで、どんな言葉で挨拶をすればいいのか」について迷う人も多いかと思われます。
そこでここでは、【タイミング別】、【立場別】に分けて、具体的に「いつどのタイミングで、どんなことに気を付けて、どんな挨拶をすればいいのか」を文例つきで解説していきます。

どの立場、どのタイミングにも共通すること

葬儀のときに用いる言葉づかいのマナーは、普段のものとは異なります。

1.重ね言葉を避ける
「またまた」「重ね重ね」などの重ね言葉は避けます。これは「不幸が重なる」という意味を持つからです。「使うことがないから大丈夫」と思っている人もいるかもしれませんが、「〇〇さまにはお世話になりました。重ね重ねお悔やみ申し上げます」「ご家族様もくれぐれもお体とお心を労わってお過ごしください」などの言葉は、意外と口から出てしまいがちなものです。

2.生死を直接的に表す言葉
「死ぬ」「生きる」「死亡した」「生きていたとき」などの、生死を直接的に表す言葉は避けます。「ご生前」「ご逝去」などの言葉を使うとよいでしょう。

3.不吉なイメージのある言葉
「浮かばれない(特に仏教の場合)」「消える」「切れる」などの言葉は避けましょう。これらは不吉なイメージを伴う言葉だからです。

4.特定の宗教に関係する言葉
よく見られる「ご冥福をお祈りします」という言葉は、仏教の言葉です。そのため、これらの表現は、神道やキリスト教の葬儀では避けましょう。ただ上の3つとは異なり、これは明確にバッドマナーであるというよりは、「避けるように気を付けた方が良い言葉」という扱いです。そのため、神道の葬儀で「ご冥福をお祈りします」と言ってしまったとしても、それが即マナー違反である、とされるわけではありません。

これを前提として、挨拶のタイミングと具体的な挨拶について述べていきます。

葬儀が始まる前の挨拶について

まずは、「葬儀が始まる前の挨拶」について解説していきます。

【参列者】
一般参列者は、主に「受付で不祝儀を渡しながら」「ご家族と相対したときに」挨拶をすることになります。

1.受付での挨拶
受付で不祝儀を渡す場合は、「こちらをお願いします」などのように簡単な言葉を添えてお渡しするとよいでしょう。受付には多くの人が訪れるため、長くしゃべることはせず、ごく簡素な言葉で済ませます。

2.ご家族との挨拶
ご家族と相対したときも、「この度はご愁傷様です」「大変なことでしたね」などのように、短い言葉をお伝えしましょう。葬儀のときのご家族は大変忙しいものですから、基本的には長く引き留めることはしません。ただしご家族の方から、「一緒に少し話したい」などと言われた場合は、できるかぎりその気持ちに寄り添いましょう。

【受付】
受付は、ご家族の立場で振る舞う必要があります。そのため、参列者に対しては特に丁寧に接する必要があります。
受付に参列者が到着した場合は、

1.まず一礼をして、「こちら(芳名帳あるいは芳名カード)にご記帳をお願いいたします」と案内をする
2.相手が不祝儀を出してきたら「お預かりします」と返します。受付はご家族の立場に立って立ち働くものですが、不祝儀を受け取るのはあくまでご家族なので、「頂戴します(=もらう)」よりも「お預かりします(=預かる)」の方がより望ましい表現といえます。
3.香典返しをお渡しするときは、「こちらをお持ちください」などのように言いながらお渡しします。またこの後に、「会場はあちらです」と示すこともあります。

【喪主・家族】
喪主・家族は、葬儀が始まる前に必ず受付の人に挨拶をする必要があります。また、タイミングによっては、参列者や宗教者に挨拶をすることもあります。

1.受付の人への挨拶
まず、受付をしてくれる人に丁寧に挨拶をします。このときは「この度はありがとうございます。何卒よろしくお願いいたします」などのように告げて頭を下げるようにしてください。なおここでは取り上げませんが、葬儀が終わった後には、菓子折りなどを持参して改めてお礼を伝えるとよいでしょう(※後日の対応で問題ありません)

2.宗教者への挨拶
宗教者への挨拶は、喪主が行います。宗教者の控え室(「御僧侶様控え室」などのように書かれています)に足を運び、「この度は、御多忙のなかありがとうございます。何分不慣れなものでございますので、よろしく御指導をお願い申し上げます」などのように告げてお布施を渡すとよいでしょう。
なお、お布施を渡すタイミングは葬儀によって異なります。葬儀の始まる前に渡すケースが多いのですが、終わってから渡すこともあります。この場合は、「この度は、御多忙のなかありがとうございました。おかげ様でつつがなく葬儀を執り行うことができました。こちら、些少ではございますが、お納めくださいませ」などのようにして渡すと良いでしょう。

3.参列者への挨拶
喪主や家族・親族は葬儀直前はしなければならないことも多くてばたついているうえに、参列者に先駆けて会場に入ることになります。そのため、参列者と話をする機会はあまりないかもしれません。ただ、ロビーで参列者と会ったり、声を掛けられたりすることはあるでしょう。その場合は、「この度は御足労いただきましてありがとうございます」などのように伝えます。

葬儀が始まった後について

葬儀が始まった後に挨拶を行うのは、基本的には喪主だけです(ただし「著しく挨拶が苦手である」などの場合はほかの人が代役を務めることもあります)。

1.通夜での挨拶
通夜の最終盤に、喪主の挨拶の時間が設けられます。このときは、参列へのお礼を中心に文章を組み立てます。
「本日はご多用中、亡き〇〇のために御足労いただきまして、ありがとうございます。〇〇もさぞ喜んでいることと思います。生前故人に賜りましたご厚情に、深く感謝申し上げます」
のようなまとめ方がもっとも簡潔です。ただこれに加えて、故人の思い出話を組み込んだり、翌日の葬式・告別式の案内を入れることもあります。

2.通夜振る舞いの挨拶
「ささやかではありますが、軽食を用意させていただきました。故人の思い出話などをお聞かせいただければとてもうれしく思います」などのように、簡単に挨拶をします。「故人の思い出話をする席であること」を挨拶に組み込むとよいでしょう。

3.葬式・告別式
葬式・告別式の挨拶のタイミングは、「葬式(宗教的儀式を含む)」が終わり、「告別式(宗教的儀式を含まない)」に移り変わるタイミングです。もう少し分かりやすく言うと、「読経や焼香が終わってご僧侶が退席したタイミング」で行うということになります。
「お足元の悪いなか(雨のときなど)、〇〇の葬儀へのご参列、誠にありがとうございました。幼少期は物のない時代で苦労もしたかと思いますが、それを子どもたちに見せない気丈な母でした。5人の子どもと10人の孫、2人のひ孫に囲まれた安らかな旅立ちでした。生前に故人に賜りましたご厚誼に深く感謝申し上げるとともに、残された家族に対しましても、変わらぬ御指導御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました」
などのような挨拶がよいでしょう。もちろん、通夜のときと同様、簡潔に述べても構いません。

葬儀が終わった後、精進落としの席での挨拶

葬儀が終わった後は、以下の流れをとるのが一般的です。

1.家族・親族で火葬場に行く
2.火葬~収骨が終わった後に一度葬儀ホール(あるいは法要ホール)に戻る
3.繰り上げ初七日法要を行う
4.精進落としの席につく

喪主は、精進落としの席が始まる前と終わった後に挨拶を行います。
始まる前には

「御多忙のなか、本日は誠にありがとうございました。おかげさまで滞りなく葬儀を終えることができました。粗宴ではありますが、食事を用意させていただきましたので、亡き〇〇を偲びながらゆっくりとお過ごしいただければ幸いです」などのように挨拶をするとよいでしょう。「何事もなく葬儀を終えられたことに対するお礼の席であること」

を告げるようにします。

精進落としの後の挨拶は、葬儀における最後の挨拶です。

「皆さま、本日は誠にありがとうございました。故人の思い出話は尽きることがございませんが、時間となりましたので、本日はここで終了させていただければと思います。今後も、〇〇の生前同様の変わらぬご厚誼の程、なにとぞよろしくお願いいたします」

というように、閉会する旨と、今後の付き合いをお願いして締めます。

葬儀の挨拶の内容は、立場やタイミングによって異なります。事前に知っておきたいものですね。

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  • この記事を書いた人
蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

最後の刻も故人様らしく迎えられるように全身全霊を尽くします。

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