式中の作法・マナー

故人様のスマホ撮影やSNSでの公開について、葬儀社が真剣に考えてみた

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最近ではスマートフォンが普及して、誰もが気軽に写真が撮れるようになり、さらにはその画像をSNSにアップして、世界中の人に向けて公開することも当たり前になりました。しかし、お葬式は厳粛な儀式であり、故人様のご遺体の撮影に関しては意見が分かれるところです。加えて、撮影した画像をSNS上に公開しても構わないのでしょうか。この記事では、故人様のスマホ撮影の是非について、「撮影」と「SNSへの公開」の2つに分けて考えてみたいと思います。

その撮影、故人様が望んでいますか?

「葬儀で故人様の写真を撮っていいのか?」

まずはじめにこの質問にお答えします。「被写体である故人様自身がその撮影を望んでいるか」どうかで判断しましょう。ご遺体を撮影していいかどうかに明確なルールはありません。撮影してはならないという決まりはない一方で、撮影に違和感や不快感を抱く人もいるだろうということです。ルールや決まりがないからこそ、その場の状況や、相手との関係性を考えながら判断しなければなりません。その時の判断基準の一つとして「被写体である故人様自身がその撮影を望んでいるか?」という視点に立つことが大切です。人によっては「闘病でやせ細った顔をいつまでも残しておいてほしくない」と考える人もいるでしょうし、「あなたたちが写真を撮りたいならどうぞ自由に撮っておくれ」と考える人もいるでしょう。
これはもう、故人様の生きざまや亡くなり方、生前の性格、そして家族との関係性によるものですから、一概に「いい」「悪い」と決められるものではありません。「死人に口なし」という言葉があるように、ご逝去された故人様は何も語りはしません。だからこそ、遺された人間たちが、故人様がいまも生きているものとして、どのように感じ、考えてくれているかと向き合うことが大切です。そしてそれこそが死者の尊厳につながります。まずは故人様に「写真撮ってもいい?」と訊ねてみて下さい。その答えは、きっとあなたの心の中に響いてくるはずです。

SNSへの公開はすべきでない

さて、次に「SNSへの公開」についてですが、断言します。すべきではありません。故人様を撮影するということは、撮る側と撮られる側との間に生じる1対1の関係性の中でのやりとりです。「大切な思い出を残しておくために」「遠方やコロナで最後のお別れができなかった人に写真を送るために」などの理由であれば、故人様も納得してくれるかもしれません。
しかし、画像をSNSに公開するとなると、話が異なってきます。故人様からすると「私の顔を勝手にSNSにアップして、第三者にさらさないでほしい」と思うでしょう。
前の章でお伝えした通り、故人様がいまも健在であるものとして考えてみるべきです。あなたが撮った家族や友人の写真を、許諾もなしにSNSにアップしたら、彼らはどう反応するでしょうか。多くの方は不快感を示すのではないでしょうか。加えて、SNSへの公開の問題はこれだけにはとどまりません。その画像を見たフォロワーの人たちが、どのような印象を抱くかということです。フォロワーからすれば、あなたのことをフォローしている以上、あなたの投稿はタイムライン上に勝手に流れてきて、選択の意志なく亡き人の姿を見なければならなくなります。多くの人は、亡くなった人の顔を自ら望んで見たいとは思わないですから、こうした人たちへのことを考えた場合、SNSへの公開は絶対に避けるべきでしょう。

仲本工事さんの妻によるスマホ撮影の是非は?

2022年10月19日、ドリフターズのメンバーである仲本工事さんが交通事故でお亡くなりになりました。まずはこの場をお借りして仲本工事さんのご冥福をお祈りいたします。
そして、同月23日に都内の斎場で告別式が行われたのですが、仲本さんの奥様である演歌歌手の三代純歌さんが、出棺直前に柩の中の仲本さんのご遺体を撮影したと言われています。この行為が物議をかもしているそうで、ネットニュースなどでも話題です。仲本さんと三代さんの関係性への過熱報道に加え、「ご遺体を撮影してもよいのか」という、誰もが抱いている答えのないあやふやな問題が露呈したために、多くの人が意見を寄せているのでしょう。そこで西田葬儀社では、「出棺前のご遺体の撮影」の是非について、なるべく中立に、冷静に考えてみます。
まず、夫の亡き姿をスマホで撮影すること自体は、本人や故人様がよしとするなら問題はありません。それ自体に違和感や不快感を持つ人がいるかもしれませんが、誰かに迷惑をかける行為だとは言い切れないからです。これは、前の章でもお伝えした通りです。
しかし、出棺前というタイミングは再考すべきかもしれません。なぜなら、会場には親族に加えて、友人知人といった参列者もいるからです。喪主としてはこうした人たちへの配慮も欠かしてはならないでしょう。
もちろん、大切な方との最後のお別れの瞬間ですから、感極まって1枚だけでもその姿をスマホに残したいという気持ちは分からなくもありません。しかし、もしも撮影するならば、まわりに誰もいない夫婦だけの時間や、家族だけで故人様を囲んでいる時など、いわば「個別」で「プライベート」なタイミングで行うのが賢明でしょう。出棺前というのは、周囲にさまざまな人が居合わせている「社会的」な場面ですから、そこにプライベートな行為を持ち込むのは控えた方がよいかもしれません。

故人様の面影は、遺影写真の元気な姿で思い出そう

お葬式に必ずつきものなのが、遺影写真です。遺影写真は、これまで撮りためてきた故人様の写真の中で、もっとも素敵な表情をしている1枚を家族たちが選び出して作られます。まさに遺された人たちが共有する“その人らしい”お顔なのです。故人様の幸せそうな写真を選ぶという行為の中には、「あちらの世界でも幸せになってほしい」「楽しかった時の思い出をいつまでも残しておきたい」という遺された側の想いが込められているように思います。葬儀会場に足を運ぶ参列者は、誰もが遺影写真を見て故人様を偲びますし、葬儀を終えたあとも、自宅に故人様の写真を飾って生前の姿を思い出すものです。感じ方は人それぞれですが、それでも亡くなった直後の顔を見て幸せを感じる人はそう多くないように思います。ご逝去の記憶、お葬式の記憶は、心の中にとどめておく方がよいのではないでしょうか。

写真撮影 葬儀現場での実情

葬儀の模様や式場内の光景などを撮影する人は多くおられます。実際に葬儀社側がカメラマンを手配してアルバムを作ることもあります。しかしそうした場合でも、遺影写真が入り込むことはあっても、柩の中の故人様を撮影することはありません。ご家族の方で、柩の中の故人様を撮影する方はおられますし、それ自体に私たちが声をかけることはありません。あとは、その方の想いや考え方に委ねるしかないのです。

いかがでしたでしょうか。とても繊細なテーマなので言葉を選びながらここまで綴ってきました。おさらいになりますが、まずはその撮影を故人様が望んでいるかを自らの心の中で問うてほしいと思います。そして、SNSへの公開は控えるべきだと私たちは考えます。ルールや決まりはありません。この記事を参考にしていただいて、みなさまでご判断いただければ幸いです。

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  • この記事を書いた人
蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

最後の刻も故人様らしく迎えられるように全身全霊を尽くします。

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