葬儀に参列する場合のマナーとしてよく「服装」「アクセサリー」が取り上げられますが、「髪型のマナー」を守ることも非常に重要です。ここでは、「葬儀のときの髪型とマナー」を取り上げて、葬儀のときにふさわしい髪型・髪の毛の色はどのようなものかについて解説していきます。
髪型の基本マナー【女性の場合】
女性の場合は、男性に比べて髪の毛の長さの個人差が大きい傾向にあります。
耳の下あたりまでの長さの女性の場合、そのままストレートにおろした状態で参加して構いません。ただし、「中途半端な長さなので、お辞儀をするときにバサバサと落ちてきてしまう」というような状況なら、ヘアピンなどで止めておくとよいでしょう。ヘアピンは、一般的なアメリカピンが使いやすいかと思われます。また、髪の毛が短い場合でも、強いパーマなどがかかっている場合は、意識してピンを使って押さえるようにします。
髪の毛が長い場合は、焼香・お辞儀の際に邪魔にならないようにするために、1つにまとめる必要があります。この場合は、耳の中央より下の位置でくくるようにしてください。それよりも上でくくってしまうと華やかな印象になるため、葬儀の席ではマナー違反とされるのです。特に髪の毛をアップにして頭頂部付近に盛ってしまうスタイルは、厳に慎むべきです。
「冠婚葬祭のなかで、弔事のときは耳より下、慶事の場合は耳より上で結ぶ」
と考えておくと失敗がありません。
髪の毛をまとめるときに使うヘアアクセサリーは、黒色や紺色などにします。ただし、茶色や灰色でもマナー違反とまではいえません。地味なゴムが基本ですが、リボンやリボン付きのネット、バレッタ、シュシュなどでも構いません。ただしこの場合は、
飾りが大きすぎるものは避けましょう。また金具のついていないものを選びます。素材は、光沢のないものを選びます。
なお葬儀の席は「身に着けているものの良さ」を競う物ではありませんから、100円ショップなどで売っている安価なものを使ってもまったく問題はありません。もちろん、事前にセレモニー用の高品質のヘアアクセサリーを準備しておけるのであれば、それが一番よいでしょう。
イギリスのエリザベス女王陛下の葬儀で、帽子やベールをまとっている参列者の姿を見たことのある人も多いのではないでしょうか。
しかしこちらの記事でも取り上げましたが、日本での葬儀の帽子もベールも基本的には使う機会はないかと思われます。帽子をかぶることが許されるのは正喪服のときだけですが、正喪服はご遺族や極めて近いご親族だけがまとうものです。また現在はご遺族やご親族であっても、正喪服ではなく準喪服を着るケースが多いため、帽子を利用する葬儀はさらに減っています。
ちなみにベールは、キリスト教のカトリックの信者のみが使えるものです。日本ではキリスト教を信仰している人自体が決して多くはないので、これを使う機会もやはり非常に少ないのです。
ここでは主に「洋装のときの女性のヘアアクセサリー」について解説してきましたが、和装の場合はどうなのでしょうか。
和装の場合は、原則としてヘアアクセサリーは使用しません。髪の毛をまとめるためにピンなどを使うことはありますが、それも表面にピンが出ないようにまとめることが多いといえます。
髪型の基本マナー【男性の場合】
男性の場合は、そのほとんどが短髪であるかと思われます。そのため、そのまま出席するかたちで問題ありません。「非常にまとまりがない」「どうしてもそのままだとラフすぎる印象になってしまう」という場合は、ワックスなどに代表される整髪剤で整えるようにします。ワックスをつけること自体は、葬儀の席でもマナー違反になりません。ただ、あまりにも香りが強い整髪剤は避けた方が無難でしょう。
長髪の男性は、オールバックにしたうえで、首の後ろ、耳の下あたりでゴムでくくるとよいでしょう。女性の場合とは異なり、ゴム以外のヘアアクセサリーは原則として使いません。
髪型の基本マナー【子どもや、病気を患っている人の場合】
子ども(特に女の子)の場合の髪型についても見ていきましょう。子どもの場合も、大人と同じく、「長ければ黒いゴムなどでまとめてくくる」というかたちをとります。ただし、大人であれば基本的には避けるべき「二つ結び」も、子どもならば問題ありません。「2つに分けて、それぞれの束をみつあみにする」などのヘアアレンジにしてもよいでしょう。
「病気を患っていて、髪の毛が抜けている」「抗がん剤の治療で脱毛しているが、まだほかの人には言いたくない」という場合は、医療用のウィッグを利用するとよいでしょう。ウィッグであるなら頭全体を自然に覆えますし、帽子をかぶる必要もありませんから、「ほかの人にはまだ話したくない、心配をかけたくない」という希望も叶えられます。
なお、どの世代・どの性別でも関わってくる「髪の毛の色」に関しては、次の項目でお話しします。
葬儀の髪の毛の色、どこまでが許容範囲?
上記では「髪の毛の色」について取り上げてきませんでしたが、ここからはこの話題について解説していきます。
それ以外の色は原則として選ぶべきではありません。ただし、濃くて落ち着いた茶色程度ならば問題はありません。なおあくまで体感的なものではあり明確な統計をとったわけではありませんが、男性の髪の毛の色の方が女性の髪の毛の色よりも厳しく見られる傾向にあるように思われます。金色や赤色などの、著しく派手な色の場合は、黒色の髪の毛にする必要があります。ただ、このためだけに美容院などでしっかり髪の毛を染め直すのは現実的ではありません。そのためこのような場合は、黒染めの髪の毛用の落とせるヘアスプレーを使うことをおすすめします。
ちなみに例外的な話ではありますが、「美容師をしていた息子が亡くなった。息子の友達にも美容師が多い。今までと同じように、生きていたときと同じように、明るく見送ってほしい。ヘアスタイルも服装も、いわゆる(葬儀における)平服ではなく、本当にいつもの日常着で来てほしい」などのように、ご家族から特別な要望がある場合は、その希望に従います。
なお、当然のことながら、「元々の髪の毛が金色である」などの場合は、黒染めスプレーを使う必要はありません。年を重ねて白髪になったという場合も、当然、その髪の毛の色のまま出席して構いません。髪の毛の色で問題になるのは、「自分の意志で、おしゃれの一環として髪の毛を染めた」という場合に限られるので、自然な色が金色や白色ならば、そのままの状態で出席して構わないのです。
「髪の毛のマナー」もまた、服装やアクセサリーのマナーと同じように重要なものです。もちろん、葬儀は「マナーの正しさ」を示すための場所ではなく、もっとも重要なのは故人に対する弔意とご家族に対する労りの気持ちを示すことではあります。ただ、敏感でデリケートな状態にあるご家族のお心を騒がせないための装いをすることもまた、ご家族に対する労りの気持ちの現れになるといえます。思いやりの気持ちを示すために、ここで紹介した「髪型のマナー」を守るとよいでしょう。