葬儀の靴のマナー(女性編)
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葬儀のときに履いていく「靴」にも、服装同様にマナーがあります。ここでは、この「葬儀の時の靴(女性用)」に焦点を当てて、そのマナーについて解説していきます。
もくじ
葬儀における「靴」のマナー、基本編
まず、葬儀のときに履く靴の基本的なマナーとして、
・金具がついていないものを選ぶ
・ヒールが高すぎるものは選ばない
・光沢のある素材は避ける
・つま先やかかとがあいているものは履かない
・ヘビ革などを使ったものは使用しない
というものがあります。これは、女性・男性・子ども、すべてに共通したルールです。
金具を使った靴や光沢のある素材のものはどうしても華美な印象になりますし、ヒールが高すぎるものも派手な印象を与えます。つま先やかかとが開いたものはたとえおとなしいデザインであってもフォーマルなものとは判断されないので、これも避けるべきです。ヘビ革などを使った靴は、「殺生」を強く意識させます。そのため、これも葬儀の場面にはふさわしくありません。また、子牛や子羊から作られるスエードも避けた方が賢明です。
現在は葬儀のかたちが多様化していますし、どのような宗教・宗派の形式にのっとって葬儀を挙げるかも故人とご遺族によって異なります。しかしこの「靴のルールの原則」は、どのような葬儀形態であっても変わりありません。また、「服装」に関しては通夜と葬儀・告別式で違いがみられる部分もありますが、靴のマナーは通夜と葬儀・告別式、いずれも共通です。歩くときには音を立てないように注意しながら歩くという「歩き方のマナー」に関しても、宗教・宗派・通夜葬式で共通しています。
ちなみに、靴と鞄のマナーはよく似ています。鞄もまた、靴と同様、金具がついているもの・光沢のある素材・ヘビ革などを使ったものは避ける、というルールがあるからです。
もう少し詳しく知りたい~葬儀の女性の靴における、プラスアルファの知識
ここからは、Q&A方式でさらに細かく女性の葬儀の靴のルールについて解説していきます。
Q1.ストラップはOK? リボンは?
A1.ついていない方が望ましいが、タイプによっては許容される
ストラップやリボンは、原則として避けるようにします。ストラップも飾りもついていないパンプスを選ぶのが基本です。
ただ、ストラップがない靴は安定しにくく、歩きにくさを感じる人もいるでしょう。その場合は、ストラップのついているものを使っても構わないとされています。
また、「飾り」であるリボンのついた靴は原則として避けるべきではあります。しかし小さなリボンや目立たないデザインのリボンで、かつ上でお話しした「葬儀の靴の基本」を守っているものならば許容されます。
Q2.ブーツはOK?
A2.基本的には避けるが、雪国などの場合は履いても構わない
繰り返しになりますが、女性の葬儀用の靴の基本は「パンプス」です。そのため、ブーツは原則として避けるべきです。ただし、「積雪地帯での冬の葬儀であり、パンプスで行くのは難しい」などの場合は、ブーツでも構いません。特に公共交通機関で葬儀式場に行く人の場合は、ブーツでなければたどり着けないこともあるかと思われます。もっとも葬儀会場の多くは駐車場を持っており、そしてその駐車場はスタッフによってある程度は除雪されていることが多いかと思われます。そのため、理想的なのは「車で駐車場まで行って、車の中でパンプスに履き替えて葬儀式場に入る」でしょう。
なお「履き替えた靴などを預けられるロッカーの有無」は、葬儀式場ごとに違います。「葬儀式場に入った後に履き替えたい」ということであれば、事前にロッカーの有無を葬儀式場側に確認しておいた方が無難です(※「親族」の立場として参列する場合は、親族控え室で履き替えることができます)。
Q3.ヒールの高さを具体的に知りたい
A3.3~5センチが適当。ただし、足元が不安な場合は2.5センチ以下でもOK
上では、「葬儀に履いていく靴の場合、高すぎる靴はNG」としました。それでは、具体的にはどれくらいの高さのヒールがよいのでしょうか。これは、3~5センチがもっとも望ましいとされています。ミドルヒールに分類される高さであり、安定感とともにフォーマルな空気感を演出することができます。ただ、パンプスを履きなれていない人の場合は、3センチ程度のヒールでも履きにくさを感じるかもしれません。また、妊娠をしている人やお子さん連れの人なども、高さのあるヒールを履くのは不安でしょう。そのような場合は、1~2.5センチ程度の高さのヒールでも構わないと考えられています。6センチ以上の高さのあるヒールは、派手な印象を与えるので避けます。
なお、ヒールの太さはある程度太いものを選びます。ピンヒールなどはとがった印象や華やかすぎる印象になってしまうため、使用は避けます。
Q4.ストッキングは?
A4.基本的には黒、通夜の場合は肌色でも構わない
靴と合わせて履くことになるストッキングについても軽くみていきましょう。ストッキングは、基本的には30デニール以下の黒色のものを選びます。このストッキングであれば、通夜でも葬儀・告別式でも使えます。ただし、「靴のルールは通夜でも葬儀・告別式でも変わらない」としましたが、ストッキングの場合は少し異なります。通夜の場合のみ、30デニール・黒色以外にも、肌色のストッキングも許容されます。
なお、葬儀の場合は原則としてタイツは使用しません。しかし現在では「タイツでも構わないのではないか」「雪国での葬儀の場合は、防寒対策としてタイツも認められる」という認識が広まりつつあります。
子どもの靴、足腰に障がいがある人の靴、妊娠している人の靴
ここまで「女性の靴」について取り上げてきましたが、最後に簡単に、「妊娠している方の靴」「子どもの靴」「足腰などに障がいがある人の靴」について解説していきます。
【妊娠している人の靴】
妊娠している方は、動きやすく体に負担の少ない靴を選ぶようにしましょう。妊娠後期になると足のむくみに悩まされやすくなり一般的なパンプスを履くことができなくなることもありますが、その場合は、ゆったりと履けるサンダルなどでも許容されます。また小さなお子さんがいて面倒をみなければならないという場合も、ヒールのない動きやすい靴で構いません。ただ大人の場合は黒色の靴を探すことは難しくありませんから、色は黒色のものを選ぶようにします。
【子どもの場合】
大人のローファーはNGですが、子どもの場合はローファーも許容されます。学校指定のローファーがあれば、それが理想的です。ない場合は黒の革靴を選ぶとよいでしょう。ただし子どもの場合は、スニーカーでの参列も認められています。ショッキングピンクなどの刺激的な色合いやぴかぴか光るもの、汚れているものは避ける必要がありますが、目立ちにくい色のスニーカーならば問題ありません。また、小学校に入学もしていないくらいのお子さんの場合は、マジックテープでつけはずしができるタイプの靴でも構いません。黒色の無地のものが理想的ですが、リボンがついていたり、パステルカラーなどの優しい色合いのものであったりするならば、許容されます。
【足腰に障がいがある人】
足腰に障がいがある人の場合は、上記の「基本のルール」を順守するのは難しいことでしょう。そのような場合は、その人の状態に合わせて歩きやすい靴を選ぶようにしましょう。たとえば、黒色の介護シューズや、黒いスニーカーなどが選択肢に入ってきます。「黒色の靴が見つからない!」ということであれば、灰色や紺色の物でも構いません。
葬儀は、「マナーを守るために無理をしなければならない場所」ではありません。それぞれの状況にあった靴を選んでください。
「その時」に慌てずに済むように、葬儀用の靴を買っておきたいものですね。