葬儀メイクのマナー~基本のマナーと考え方
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ある程度年齢を重ねた女性ならば、葬儀のときにメイクをしていくことが多いかと思われます。
ここではその「葬儀メイク」に焦点を当てて、「葬儀メイクとはそもそもどのような性質を持つのか」、「葬儀メイクの基本」、「併せて知りたい、髪型と爪のマナー」について解説していきます。
もくじ
葬儀メイクは、故人とご家族に配慮するべきもの
葬儀メイクは、日常あるいはハレの日にするメイクとはまったく性質が異なります。葬儀以外のときにするメイクは、自分を美しく見せるためのものです。そのため、自分自身をよりきれいに見せるための手法と道具を使って行っていきます。
しかし葬儀メイクの場合は、故人やご家族に配慮して行うべきものです。
自分自身を美しく見せるためではなく、身だしなみとして行うものなのです。そのため、華美な化粧や華やかすぎる化粧は厳禁です。
葬儀メイクの考え方として「片化粧」というものがあります。「片化粧」とは、競技の意味では「口紅を引かないこと」をいいます。
この片化粧は、
「心が落ち込んでいて、紅をひくことすらもできません」あるいは「『紅』は慶事をイメージさせるものであるから、使いません」
という思いを表すものだともいわれています。
ただこの「片化粧」は現在はやや拡大解釈されることも多く、単純に「口紅をひかないこと」だけを指すのではなく、「全体的に色味が少なく、薄化粧であること」を指す単語にもなっています。
ちなみに後者の意味で使われる「片化粧」はしばしば「ナチュラルメイク」と混同されます。しかしナチュラルメイクは、「薄化粧に見せるために、しっかりメイクをするもので、より自分らしさや自分の美しさを引き立たせるためのメイク」であるのに対し、片化粧は「実際に薄化粧であり、喪に服すべき場面で、マナーとして行うもの」であるという違いがあります。
なお、「薄化粧にしなければならないのであれば、いっそノーメイクでも良いのではないか?」と考える人もいるかもしれません。
しかしある程度の年齢になった女性の場合、ノーメイクは逆にマナー違反であると判断されることが多いといえます。そのため、「肌が非常に弱く、ドクターストップがかかっている」などのような状況でもない限り、女性はメイクをして葬儀に参列すべきです。
葬儀メイクの基本~アイメイク、チーク、口紅について
ここからは、葬儀メイクをより具体的に見ていきましょう。なお、ここではアイメイク、チーク、口紅を取り上げますが、いずれの場合であっても、ラメが入っていたり鮮やかすぎる色だったりするものは使いません。
【アイメイク】
葬儀の際には、アイメイクは行いません。アイメイクはどうしても華やかな印象になってしまいがちだからです。アイラインやマスカラ、つけまつげはつけません。なお、アイシャドウに関しても原則使用しません。ただ、「アイシャドウがないとあまりにも目がはれぼったく、不自然になりすぎてしまう」などのような場合は、ブラウン系・ベージュ系などのアイシャドウを使ってカバーしてもよいでしょう。
極端に太い・細い眉を書くのでもないかぎりは、アイブロウは使っても問題はありません。自分の眉毛本来に近い形で書くとよいでしょう。また、これは葬儀メイクに限った話ではありませんが、自分の髪の毛の色に似たカラーのアイブロウを選ぶことが重要です。
【チーク】
チークも、基本的にはつけないようにします。ただ、頬の色に関しては千差万別ですから、「つけていないと周りから心配に思われるほどに血色が悪くなる」というような場合は、ファンデーションの上に軽くチークを置くことは認められています。自分の肌に近い色合いのものや薄いピンクのものを選び、控えめにつけるようにします。
ファンデーションについても少し触れておきましょう。ファンデーションは艶が出すぎるものは避けます。パウダータイプのファンデーションが使いやすいことでしょう。リキッドタイプを使うのであれば、フェイスパウダーでカバーしてあげると葬儀メイクにふさわしい出来になります。ただし「葬儀メイクのためのファンデーション」を訃報を聞いた時にすぐに買いに行くのはなかなか難しいことでしょうから、ラメ入りなどでない限りは神経質になりすぎる必要はないかと思われます。なお、明るすぎる印象になるハイライトは使いません。
【口紅】
上では、「葬儀メイクの基本は片化粧であり、片化粧では口紅を使わない」としました。そのため、口紅の使用は原則として避けます。ただこれもチークと同じで、「つけていかないと血色が悪くなりすぎてしまい、周りの人に心配されてしまう」ということであれば、薄い落ち着いた色の口紅をつけていっても構いません。
なお、「リップ」に関しては見解が分かれます。かつてはリップの使用はNGとされていましたが、現在では許容する声も出ています。ただ葬儀メイクの場合は、「NGか、NGでないか」のギリギリのメイクをする必要はありません。そのため、「唇が切れて出血する」などの事情がある場合以外は使用を避ける方が無難です。
ここまで葬儀メイクの基本について取り上げてきましたが、「葬儀・告別式の場合は家で準備してから行けるが、通夜の場合は会社から直行しなければ間に合わない。しかしメイクは職場に行くとき用のものだ……」ということもあるでしょう。その場合は、ティッシュを使って対応することをおすすめします。口紅はティッシュで押さえることで落ち着いた印象にすることができますし、ちょっとしたメイク直しにも役立ちます。また、フェイスパウダーを使うことで艶感を押さえることもできます。
アイラインやマスカラは、使わないのが原則であるとすでに述べました。しかし仕事帰りに急場で駆けつける場合は、「しっかり入っているのではなく、目立たない程度に、ブラック~ブラウンの色が入っているアイライン」「一応使ってはいるが、ボリュームはほとんどないマスカラ」などは許容されることが多いといえます。
併せて知りたい、髪型と爪のマナー
最後に、葬儀メイクと併せて知っておきたい髪型と爪のマナーについても軽く触れておきましょう。
髪の毛の色は黒色が望ましいのですが、人の死は突然訪れるものです。そのため、葬儀に参列するために染め直すのは現実的ではありません。現在はおとなしい茶色程度の髪色ならば、葬儀の席でも問題はないとされています。極端に派手な色(金色や明るいピンク、グリーンなど)は、黒染めのスプレーを使って短期的に色を変えるとよいでしょう。髪の毛をまとめる場合は、シュシュやバレッタ、ゴムを使います。これらは黒色あるいはブラウンのものを使い、華美にならないように気を付けます。なお、黒色であるならばおとなしいリボン程度の髪飾りならば使用しても問題はありません。髪の毛が長い場合は、耳の下でまとめるようにします。耳よりも上の位置で結ぶと華やかな印象になるためです。
葬儀のときには、マニュキアなどは使用しません。自分で塗ったものならば、落とすのがマナーです。ただし「爪が非常に弱く割れやすいので、保護のためにジェルを縫っている」などの事情がある場合は、落とす必要はないでしょう。
なお「昨日ネイルサロンに行って、ネイルアートをしてもらった」「自分で落とすのが難しい」という場合は、葬儀用の手袋を使います。焼香を行う際には爪先が出ますが、これくらいならばそれほど問題にはなりません。
葬儀メイクは、日常でのメイクやハレの日のメイクとは大きく意味合いが異なります。大切な人を送る場にふさわしい、落ち着いたメイクをしていきましょう。