喪主は、葬儀の中のさまざまな場面で挨拶をしなければなりません。挨拶についての基本的な知識やマナーについて理解しておくことで、余裕をもって本番に臨むことができるでしょう。
シーン別の例文もつけて詳しく解説いたします。どうぞ参考になさってください。
喪主の挨拶 3つのシーン
喪主が参列者に向けて挨拶を行うのは、主に次の3つのシーンです。それぞれ挨拶の相手や内容が異なります。
●通夜閉式後
お通夜が閉式した後、親族や、親族以外の一般会葬者に向けて挨拶をします。まずは、忙しい中、足を運んでいただいたことの御礼、それに加えて親族に向けて、翌日行われる葬儀・告別式の案内もします。
●葬儀・告別式の出棺前
葬儀・告別式の喪主挨拶は、棺を目にして、出棺を見送って下さる一般会葬者に向けて挨拶をします。お葬式全体の中で、最も涙を誘う場面でもあります。
●精進落としの席
精進落としとは、火葬を済ませ、お葬式のすべての行程を終えたあとの会食の席です。2日にまたいで参列して下さった親戚の方々に、感謝とねぎらいの挨拶をして、食事を始めます。
それでは、具体的に例文をもとに、それぞれのシーンの挨拶を解説します
通夜閉式後の挨拶
通夜閉式後の挨拶は、特に一般参列者に向けることを意識しましょう。
親族は2日にまたいで参列をするのが基本ですが、それ以外の一般会葬者は通夜だけに参列するという人が大半で、通夜閉式後が唯一の挨拶の場面となるからです。会社関係、ご近所、友人や知人といった方々を意識して、次の3点を押さえて文面を作りましょう。
・参列の御礼
・生前の故人について
・翌日の葬儀告別式の案内
【例文】
本日はご多用中にも関わらず、亡き父、名古屋太郎の通夜式にご弔問いただきまして、まことにありがとうございます。生前に故人が皆様より頂戴しましたご厚情に対し、厚く御礼を申し上げます。
父は〇〇病院にて令和4年9月15日、80歳で息を引き取りました。長らく勤めていた会社を定年退職したあとは、絵画や旅行を趣味として、自ら筆を手にしては近所の公園や旅先で、絵を描いていました。後方ロビーに故人の手がけた作品を飾りましたので、ぜひともお帰りの際に見てやってください。父もさぞ喜ぶものと思います。
会社でお世話になった方、趣味のお友達、ご近所の皆様と、これだけの方に最期を見送られて、父は本当に幸せ者だと思います。皆様のおかげで、私たちもしっかりと明日の葬儀に臨むことができます。本当にありがとうございます。
明日の葬儀・告別式は午前11時より執り行います。もしもお時間を許す方は、父の最期を見届けていただければ幸いでございます。
本日は誠にありがとうございます。
葬儀・告別式の出棺前
通夜式の翌日には、葬儀・告別式が行われ、故人様はいよいよ火葬場へ出棺し、荼毘に付されます。柩を前にして、あるいは霊柩車に柩を乗せたあとに、参列者全員に、生前お世話になったこと、そして最後のお別れのために足を運んで下さったことへの感謝を述べましょう。
【例文】
遺族を代表して一言ご挨拶申し上げます。故人の長男、名古屋次郎でございます。
本日は、ご多用中のところ、父 名古屋太郎の葬儀・告別式にご会葬いただき、誠にありがとうございます。生前故人が賜りましたご厚誼、ご厚情に対しましても、深く感謝申し上げます。
長い期間、病と闘って来た父でしたので、私たち家族も覚悟はしておりましたものの、実際にこのときを迎えると、とても悲しく、寂しい思いばかりがこみあげます。
闘病中の父をたくさんの方が見舞ってくれたことは、本当に感謝しかございません。息を引き取る直前の父も「たくさんの人たちがお見舞いに来て、応援してしてもらえて、私は幸せ者だ」と話しておりました。父に代わって、心から御礼申し上げます。ありがとうございます。
これより八事斎場へ出棺、荼毘に付されますが、これだけの方にお集まりいただきましたので、寂しがり屋の父もしっかりと天国へと旅立ってくれるものと存じます。
そして、私たち家族は、父の亡きあとを力を合わせて頑張って参ります。皆様方に置かれましては、今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
以上、簡単ではございますが御礼のご挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
精進落としの席での挨拶
火葬を終えたあと、親族は精進落としと呼ばれる会食の席を囲みます。喪主は、食事を始める前に一言挨拶を述べます。ここでの挨拶は、その場に居合わせる親族に向けて、通夜と葬儀の2日間参列していただいたことに対する御礼を述べます。
【開始時の例文】
昨日の通夜式、そして本日の葬儀・告別式、さらには火葬と、2日間に渡るお葬式を全て滞りなく終えることができました。これもひとえに両日にわたってご参列いただきました皆様のおかげでございます。改めて御礼申し上げます。
ささやかではございますが、精進落としの席をご用意いたしました。どうぞお時間の許す限りおくつろぎいただき、私たちに生前の父との思い出話などを聞かせて下さい。
本日は誠にありがとうございます。
【終了時の挨拶】
本日は、誠にありがとうございました。
皆様から、私どもの知らない父の姿を伺うことができ、大変うれしく思います。まだまだお話は尽きないとは存じますが、あまりお引き止めするのもご迷惑になってしまいますので、このあたりでお開きとさせていただきます。
今後とも、どうぞ私たち家族にお力添えをいただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。どうぞお気をつけてお帰りくださいませ。本日は、誠にありがとうございました。
上手に挨拶するための5つのポイント
葬儀という不馴れな場所で、しかも人前での挨拶が上手にできないかもしれないと不安に感じる人も少なくないでしょう。上手に挨拶するためのポイントは次の5つです。
短くても構わない
きちんとした文面で、長く流暢に話そうと思わなくても構いません。他の式次第の時間配分にも関わって来ることもあり、むしろ葬儀の挨拶は簡潔な方がよいとされています。通夜の閉式後や出棺前の挨拶は2〜3分程度、精進落としの前の挨拶は目の前に食事も並んでいることもあり、さらに簡潔であってもおかしくありません。
紙を見ながら読む
紙を読みながらの挨拶でも失礼にあたりません。原稿を書いてそれを読み上げるのでもよし、ポイントを箇条書きにしておいてたまにメモを見ながら挨拶するもよし。セリフを一字一句覚えなくても大丈夫です。
代理を立てる
挨拶は喪主が行うのが一般的ですが、どうしても挨拶に自信がない、体調が悪いなどの理由があれば、代理の方が行なっても構いません。その場合は「喪主に成り代わり…」と、一言自己紹介をして挨拶を始めるのが良いでしょう。
忌み言葉に気を付ける
「忌み言葉」とは葬儀での使用を避けるべきとされる文言です。不幸を想像させてしまう言葉や数字、その他生死に関わる生々しい表現には充分に気を付けましょう。代表的なものに次のようなものがあります。
▶不幸が続くことや重なることを連想させる
たびたび、再三、続いて、追って
▶不幸を連想させる数字
4や9
▶生々しい表現
生きる、死ぬ、苦しむ、など
自身の正直な思いを伝える
大切な家族を失って、辛い思いをしているのは遺族だけではありません。その場に居合わせる人たち全員が故人様の死を悲しんでいます。あまり上手に、定型的に読み上げようとせずに、自身の正直な思いを挨拶に込めてもよいでしょう。きっと参列者の方々の心に響くものとなるはずです。
いかがでしたでしょうか?
葬儀で挨拶をしなければならなくなった時には、ぜひともこの記事を参考にして頂ければと存じます。