葬儀に参列する時に履くべき靴のマナーについてご存じですか?
葬儀では黒の喪服を着用しますので、「黒の靴なら大丈夫」と思いがちですが、実はそれだけだと落とし穴にはまる可能性があります。黒の革靴にもさまざまな種類があるからです。喪服の着用は、文字通り「喪に服す」ことを衣服を通じて表すことに他なりません。きちんとした服装マナーで参列することが、そのまま故人様を悼み、ご遺族をいたわることにつながるのです。靴についても、葬儀にふさわしいものがあります。この記事を読んでいただき、葬儀の時に男性が履くべき靴について理解を深めていただければと思います。
基本は黒の革靴 5つのポイント
まず結論からお伝えします。葬儀の時に男性が履くべき革靴は、「黒色の内羽根でツヤのないストレートチップの紐靴」です。具体的に解説していきます。
黒色の革靴
革靴にもさまざまな色がありますが、葬儀では全身を黒で統一するのが基本ですので、足元も黒色の靴にします。また、革靴といっても、一般的な合成皮革か本革が基本です。ヘビ革やワニ革の靴はNGです。
ストレートチップ(またはプレーン・トゥ)
革靴にもさまざまな種類がありますが、葬儀の参列時は「ストレートチップ」か「プレーン・トゥ」が望ましいです。
「ストレートチップ」(ストレート・トゥ・キャップとも呼ばれる)とは、つま先部分に横一文字で切りかえされたスタンダードでシンプルな革靴です。フォーマルな場面で履くべき靴の筆頭とされています。また、つま先に切り返しや装飾のないシンプルな「プレーン・トゥ」でも問題ありません。
つま先部分の切り返しがW字型の「ウィングチップ」、つま先がU字型の「Uチップ」、V字型の「Vチップ」などは、カジュアルな雰囲気が強いため、NGとされています。
ツヤ消し
革靴にも、ツヤ消しのものもあれば、光沢感があるもの、エナメル素材のものもあります。葬儀は亡き人を悼み、ご遺族をいたわるためのものです。ツヤや光沢があるものは避けて身を慎みます。
紐靴
葬儀の時に履くべき靴は紐靴が基本です。
革靴の中にも、金具付きのストラップで固定する「モンクストラップ」や、靴紐のない「ローファー」などがありますが、これらもカジュアルな印象が強いため、NGです。
内羽根式
ここまでのポイントは、みなさんもだいぶイメージできるかと思いますが、実は革靴には内羽根式と外羽根式があるのをご存じでしたか? 靴のハトメ(靴ひもを通す穴)部分の構造に違いがあり、葬儀の靴は内羽根式が望ましいとされています。
内羽根式とは、羽根が甲の部分と一体になっているか、甲の前部分の革に入り込んでいる形状のことです。羽根が全開しないので、慎ましい印象があり、フォーマルに最適です。
一方、外羽根式とは、ハトメの部分が甲の上に乗っている形状の靴で、紐を外すと羽根が外側に全開します。ビジネスの場面、カジュアルな装いの際によく履かれます。
葬儀で履く靴としては、よりフォーマル感の強い内羽根式の革靴を選びましょう。
ここまで5つのポイントを個別に解説して参りましたが、以上のような理由から、まだ葬儀の靴を持っていないという方は、「黒色の内羽根でツヤのないストレートチップの紐靴」を用意しましょう。
葬儀の靴 3つの注意点
どんなに葬儀にふさわしい靴を用意したとしても、扱い方においても十分に注意しなければなりません。葬儀の靴の注意点は、次の3点です。
清潔感
葬儀に参列する時は、清潔な靴を履くのが望ましいです。泥やほこりがついていないか、靴底のゴムがすり減っていないか、しわが寄ってくたびれた感じになっていないかなど、周囲に不潔な印象を与えないようにしましょう。訃報はいつ届くか分からないものですから、対応に苦慮される方も少なくないと思います。可能であれば、普段から定期的に靴の手入れをしておくのが理想です。それが難しいという方は、靴磨きサービスなどを利用してもよいでしょう。
靴音
革靴を履いて歩くと、靴が床にあたるときに甲高い「カンカン」という靴音が鳴りがちですが、葬儀の現場ではマナー違反とされています。靴音が出ないよう、かかとではなく、つま先から歩くよう意識しましょう。
靴下
靴と共に気を付けなければならないのが靴下です。靴下も黒無地が基本です。その上で、光沢のあるもの、柄が入っているもの、くるぶしよりも丈が短いものなどは避けるようにしましょう。
革靴の購入方法
革靴の相場
葬儀にふさわしい革靴の相場は1万円前後です。ただ、もっと詳しく見てみると、安いものだと3千円程度、高価なものだと10万円を超えるものもあります。
どの価格帯のものを選ぶかは本人次第です。
「葬儀や法事の時以外は履かないから安いものでいい」
「大切な冠婚葬祭の儀式だから、きちんとしたものを買っておこう」
…などと、考え方もさまざまです。ご自身の予算や考えに沿ったものを選びましょう。
選ぶときの考え方
葬儀に履く靴は、「高すぎず、安すぎず」がポイントです。
高価なものを用意してしまうと、ご自身も経済的に負担に感じてしまいますし、周囲の人たちがその靴を見ることで、ついつい自分の履いている靴と比較してしまう可能性もあるでしょう。
葬儀の主役はあくまでも故人様やご遺族であり、喪服の役割は、みなと同じ服装をして喪に服している心を形に表すことです。自身が着用するもので個性が出すぎない配慮が求められます。そのような、故人様、ご遺族、周囲の参列者へのケアがきちんとできていて、かつ清潔感が保たれていれば、安価なものであっても構いません。
革靴はどこで買う?
革靴はさまざまな場所で購入できます。百貨店などの商業施設、靴専門店、紳士服店に加え、最近ではディスカウントストアなどでも見かけます。
インターネットでも購入可能ですが、靴の場合は履き心地を実際に体感することが大切です。足に合わない靴を選んでしまうことで、健康を害してしまったり、葬儀の参列そのものが苦痛に感じられてしまいますので、実店舗で試し履きをした上で購入することをおすすめします。
未成年の男子が履くべき靴
ここまで、葬儀に参列する時の男性の靴について解説してきましたが、では未成年の場合はどのような靴を履けばよいのでしょうか。
制服がある場合
もしも学校指定の学生服がある場合は、それを着用します。足元も普段通学する時に履くもので構いません。大人ではNGとされているローファーも、学校が指定しているものであれば問題ありません。
スニーカーで通学している場合は、華美な色でないかどうかだけ配慮し、必要であれば落ち着いた色の靴をひとつ用意しましょう。白の運動靴を指定する学校も少なくありませんが、学生の場合はこれも問題ないとされています。
制服がない場合
もしも学校指定の学生服がない場合は、黒や紺やグレーなどの地味目な色の服装でまとめますので、靴もそれに見合ったものを用意しましょう。
乳幼児の場合は、ある程度落ち着いた色柄のものを選べば、そこまでこだわる必要がありません。むしろ、履きやすさ、過ごしやすさに気を付けて、長時間の参列がなるべく苦痛にならないように気を付けてみましょう。
人の印象は足元から始まるとはよく言われることです。繰り返しになりますが、葬儀の男性の靴は、「黒色の内羽根でツヤのないストレートチップの紐靴」です。服装マナーを守り、正しい靴を履くことで、より心を込めて参列できることでしょう。