葬儀が発生した時に、どのようにお寺とやりとりすればいいのでしょうか。とあるお寺の檀家になっている場合はそのお寺に葬儀を依頼しなければなりませんが、中には、「お寺が遠方で声をかけるべきか迷っている」「別のお寺にお願いしたい」…などと考えている人も少なくありません。また、菩提寺がないという方も多く、その場合どのように僧侶を探せばよいか分からないものです。そうしたお悩みを抱える方のために、そもそも菩提寺と檀家とはどのような関係にあるのか、葬儀の時にどのように対応すべきか、詳しく解説いたします。
菩提寺と檀家の関係をおさらい
菩提寺と檀家。聞いたことがあるけどよく分からないという方のために、まずは両者の関係性について押さえます。
檀家とは、菩提寺を支える家のこと
「檀家制度」や「寺檀制度」ということばを聞いたことがあるでしょうか?
これは、先祖供養をしてくれるお寺と、その家との関係のことを指します。菩提寺は檀家の先祖を供養し、檀家は菩提寺を人的、経済的に支えます。もともとお寺という宗教施設は、信者たちの支えによって成り立っていました。お釈迦さまの生きた時代から仏教では、悟りを目指す修行者は生産活動をすべきでないとし、衣食住をはじめとする僧侶の生活を、すべて信者たちの寄付やお布施で支えていたのです。こうした形は日本でも見られます。公家や武家などの有力者が寺や僧侶を援助しただけでなく、信者たちは自身の信じるお寺に対してお布施を納めました。この両者の関係を、宗教統制政策として固定化、制度化したのが徳川幕府でした。キリシタン排斥や住民調査などを目的に、民衆に対して必ずどこかのお寺の檀家になり、菩提寺を支えるように義務付けたのです。
お寺はそもそも檀家のもの
「お寺は住職のもの」と考えている人が多いのですが、実はこれは正しくありません。お寺はそもそも檀家のものです。檀家全員で、お金を出し合い、建物の維持や掃除などをして支えあいながら、自分たちの家の先祖や地域社会の中心地であるお寺を守ります。
また、いまでこそ住職家族による世襲が当たり前になりましたが、ひと昔前までは、前の住職が死亡や病気などになってしまったら、本山寺院から新たな住職を招くのが当たり前でした。お寺はあくまでもその地域に住む檀家のものであり、そこに供養の専門家である僧侶を招き入れて住まわせたのです。お寺の僧侶のことを「住職」と呼ぶのは、まさにそのためです。それはいわば、株主と経営者のような関係とも言えます。お寺の運営や儀式の執行は住職が行いますが、経営権や経営方針は檀家一人一人が主張できるのです。
ただし、現実的には住職と檀家(檀家総代や役員を中心とする)のパワーバランスはお寺によってさまざまです。住職の力が強く、檀家はただお寺の言うことに従うだけというところもあれば、檀家たちがしっかりと発言しながら寺院運営しているところも少なくありません。「寺離れ」だと言われる時代ですが、両者のコミュニケーションがきちんととれているお寺の場合、総じて檀家の菩提寺に対する満足度は高い傾向にあります。
菩提寺が檀家にすることに、次のようなものが挙げられます。
故人の葬儀
檀家に葬儀が発生したら、導師としてその人の葬儀を執り行います。
先祖の供養や法要
一周忌、三回忌、七回忌などを営み、檀家の先祖を定期的に供養します。
定期的なお参り
故人の亡くなった月日にお参りする「月参り」、お盆時期に檀家をまわる「盆参り・棚経」、毎年やって来る命日(祥月命日)の供養などがあります。
お墓の管理
境内にあるお墓や、納骨堂に眠るお骨の管理などをします。
お寺でのイベントや法要
毎年決まった月日にお寺で行われる法要(彼岸法要、施餓鬼法要など)や、檀家に向けたさまざまなイベントを催します。
対して、檀家が菩提寺に対してすべきことに、次のようなものが挙げられます。
お寺の取り組みへの参加(法要、掃除、イベントなど)
お寺で行われるさまざまな取り組みに参加します。毎年行われる法要の準備や参列、定期的な掃除、最近では落語会や音楽の演奏会などを行うお寺も少なくなく、こうしたイベントへの参加も自由です。
葬儀や法事の際のお布施
葬儀や法事を行う時は、菩提寺に依頼するのが原則です。その際、お布施を用意して納めます。
建て替えや修繕の際の寄附
お寺の本堂や住職の住む庫裏(くり)など、境内の中の施設の建て替えや修繕が発生した際には、お金を寄付します。一口あたりの金額が定められている場合もあれば、金額は任意で構わないとすることもあります。また、事前に予算計画を立て、毎月毎年決まった金額を納めるなど、お金の集め方もさまざまです。
総代、役員としての参加
檀家は数十件、数百件と、数多くの家で構成されていますが、檀家の中で代表的な立場になって、お寺の運営方針を決めていくのが檀家総代や各役員です。
葬儀が発生した時の対応
ここまで、檀家とは、菩提寺とは、そして両者の関係性ついて解説してきましたが、では、実際に葬儀が発生した時に、私たちはどのように菩提寺と向き合えばよいのでしょうか。すべきことは主に次の4つです。
身内に不幸が起きる、起きそうだったら菩提寺に連絡
ご臨終を迎えたら、すぐに菩提寺に連絡します。また、危篤なった段階で連絡しても構いません。いつ葬儀が発生してもいいように準備をしてくれるはずです。もしも菩提寺が分からない場合は、親戚などに確認します。また、仏壇がある場合は、仏壇の中に連絡先の書かれたものが保管されていることも少なくありません。
日程の調整
葬儀日程は、葬儀社とだけではなく、菩提寺の都合も確認しながら決めていきます。
戒名についての希望
戒名とは、故人が仏弟子になる際の名前のことで、永代にわたってこの名前に対して供養がなされます。戒名の中には生前の名前の一文字が入ることが多いようです。故人を偲びながら、故人がどういう人柄でどんな生涯を送ってきたかの話を聴いて、戒名を決めていく僧侶も少なくありません。
お布施について
お布施をいくら包むべきか分からない人は、率直に菩提寺に訊ねてみましょう。「お気持ちで」と言われることもあれば、檀家たちによって目安を定めているところもあります。
菩提寺が遠方の場合はどうすればよい?
故郷の菩提寺が遠方にある場合でも、まずは菩提寺に一報を入れましょう。その上で次のいずれかのケースで葬儀を行うこととなります。
・どんなに遠くても菩提寺が来てくれる
・戒名は菩提寺が授けるが、檀家の近くにいる同宗派のお寺を紹介してくれる
「遠方だから、お寺にとってもきっと迷惑だろう」と勝手に考えずに、まずは菩提寺に連絡して「遠方ですが、どうすればよいですか?」と訊ねることが大切です。
菩提寺を変えたいが、そんなことできる?
菩提寺に連絡せずに、他のお寺で葬儀をしてもらうことは、できなくはありません。ただし、菩提寺にお墓がある場合は要注意です。他のお寺で戒名を授かって葬儀をしてもらうことで、菩提寺と檀家の関係性に反するために、埋葬を受け付けてもらえない危険性があるからです。
菩提寺がない場合は葬儀社に紹介してもらえる
「故郷から出て長い年月が経っている」
「実家は兄が継いで、わが家は分家」
こうした理由から、そもそも菩提寺がないというケースもあります。その場合は葬儀社にお寺を紹介してもらいましょう。日程や宗派などの希望を伝え、その条件に合った僧侶を派遣してくれます。戒名やお布施の希望も受け付けてくれるでしょう。
葬儀社紹介のメリット
葬儀社にお寺を紹介してもらうことには次のようなメリットがあります。
どの宗派でも対応してくれる
葬儀日程を喪主都合で決められる
お布施の希望を伝えられる
葬儀以降の付き合いを無理にしなくてもよい
基本的には、葬儀社が間に入ってくれるので、こちらの希望条件に合った僧侶が来てくれます。また、葬儀後もその僧侶に引き続き供養してもらいたいと思えば、四十九日や一周忌なども依頼できますし、そうでなければ葬儀だけでの付き合いにしても構いません。
葬儀社紹介のデメリット
一方で、次のようなデメリットにも気を付けなければなりません。
どんなお坊さんが来るか、当日まで分からない
希望の宗派に対応できないこともある
菩提寺があることがあとから分かるとトラブルになる
親戚など周囲の人から苦言を呈される
どんな僧侶が来るかは葬儀社次第という不安もあります。また、寺院数の少ない場合は僧侶の手配ができない可能性もあります。そして何より、菩提寺がある場合は、さまざまなトラブルのもととなるので注意が必要です。まずは菩提寺の有無の確認をしておくべきでしょう。
いかがでしたでしょうか。檀家と菩提寺について、さらに詳しく知りたいとお考えの方は、どうぞお気軽に西田葬儀社にご相談下さい。