葬儀を終えたあとも、故人の供養は、四十九日、一周忌、三回忌と続いていきます。ところでこの法要、一体いつまで続くものなのでしょうか。この記事では、法要の区切りについて分かりやすく解説いたします。その他、納骨のタイミングや「弔いあげ」という用語の解説もいたします。どうぞ最後まで読み進めてみて下さい。
追善法要と年忌法要
葬儀をしたからといって、故人はすぐに成仏するわけではありませんし、遺族の悲しみもすぐに癒えるというわけではありません。時間をかけて、ゆっくりと故人の死を受け入れていきます。法事は、その時間の経過の中で定期的に親戚や僧侶が集まって故人を偲ぶ、とても意義深い行事なのです。
葬儀後の法要には「追善法要」と「年忌法要」があります。まずはこれらの意味を押さえておきましょう。
追善法要とは
追善法要とは、四十九日までの法要のことです。初七日、二七日、三七日、四七日、五七日、六七日、そして七七日(四十九日)と、七日ごとに行われる法要のことを指します。最近では四十九日までの法要を省略するケースが増えましたが、かつては当たり前のように7日ごとにお坊さんがお参りに来てましたし、いまでも地域によってはこうした風習は多く見られます。
「追善」とは、故人に代って遺族が善を積み、故人が来世でよい世界に生まれ変わることを願うことです。仏教の「輪廻転生」と道教の「十王信仰」が混在した日本の葬送文化では、人は亡くなると四十九日の旅に出て、閻魔大王によって転生先が決まると考えられています。天に生まれ変わる者、再び人間になる者、地獄に落ちる者、死後の行き先は故人の生前の行いによって決まります。どれだけ善い行いをしたかによって生まれ変わる世界が異なるのです。
しかし、故人はもうすでに亡くなっており、これ以上善行を積めない。だからこそ、故人に代わって遺族が7日ごとに法要をすることで、善行が積み上がり、その功徳が故人に巡り、よい世界に生まれ変わるとされているのです。「追善」と呼ばれるのはそのためです。
年忌法要とは
年忌法要とは、決まった節目の年の故人の命日に営む法要のことです。具体的には、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌法要がこれにあたります。地域によっては五十回忌や百回忌を行うところもあるようです。
定期的に親戚が集まり、故人を偲んで供養することによって、親戚同士のつながりを再確認でき、その功徳が故人にも向けられると考えられています。
年忌法要の年齢の数え方
年忌法要の数え方はやや難しいので、ここでいったん整理しておきましょう。
亡くなった翌年の法要を「一周忌」と呼びます。これは年月が一周まわったあとに行われる法要だからです。
しかし、二年目以降は「三回忌」と呼びます。日本では伝統的に数え年が採用されていましたが、仏事の世界においてはいまも数え年が基本です。
数え年では
・生まれた年を1歳とする
・誕生日ではなく、正月を迎えるごとに1歳年をとる
ものとします。
これに従うと、ご逝去されたときの葬儀が「1回忌」、翌年の命日(一周忌)が「2回忌」、そしてその翌年の命日が「3回忌」となるのです。以降、法要では「〇周忌」ではなく「〇回忌」と表現されます。
法要は三十三回忌までが基本
ここまで、追善法要と年忌法要についての基本的な知識を述べましたが、では法要は一体いつまで行うものなのでしょうか。基本的には三十三回忌までとされています。その意味を詳しく解説していきます。
33年は世代交代するタイミング
33年の年月は、ちょうど世代交代するタイミングでもあります。つまり親の葬儀をし、供養を続けてきた子もまた、この世界を旅立つ時期になるということです。あらゆる文化で「人は二度死ぬ。1度目は肉体的な死、2度目は人々の記憶から忘れ去られた時だ」と言われていますが、33年とは、まさに故人の供養を主体的に行っていた人が亡くなり、同時に故人が2度目の死を迎える時期を意味するのです。
加えて仏教は「3」という数字を好みます。三界、三宝、三密、三学、三蔵、三法印など。そうしたことから、三十三回忌を大切な区切りの法要と位置づけたのでしょう。
49日でホトケとなり、33年でカミとなる
ちなみに日本の供養文化では、人は49日でホトケとなり、33年でカミとなると長らく信仰されてきました。ここでいうホトケとは「祖霊」の意味で、要はご先祖様の仲間入りをするということです。そして、長い時間をかけて、その家の先祖から、村全体の氏神へと昇華して、人々の記憶からは消え去っても、その地域の自然に溶け込んで私たちを見守ってくれると考えたのです。
日本の民俗学では「荒魂」「和魂」という言葉があります。葬儀後の故人の霊魂は荒ぶるものですが、追善供養などで鎮魂をすることで、霊魂が穏やかになっていく、このさまを表現した言葉です。そして和魂となった先祖はやがて、カミに、つまり氏神となり、自然崇拝やそのシンボルの神社で礼拝されるのです。三十三回忌とは、まさにホトケからカミになる、大切な儀式だと言えます。
「弔いあげ」とは、供養が完成することの意味
三十三回忌のことを「弔いあげ」と呼びます。地域によっては「問いきり」と呼ぶところもあるようです。これは、故人の供養がひと段落し、完成したことを意味します。これ以上は個別に故人を供養しなくても大丈夫だとし、仏壇の中の位牌をお寺に還し、「先祖代々」の位牌にまとめられます。弔いあげの時期は地域によって異なり、三十七回忌や五十回忌にしているところもあります。
最近では七回忌や十三回忌で済ますケースもある
少子高齢化社会の昨今では、33年も供養を続けられないという人が多く、七回忌や十三回忌以降、法要をしないというケースも見られます。また、儀式としての法要だけでなく、現実的に仏壇やお墓を守れない人たちは、お寺に永代供養をしてもらいます。永代供養にすることで、お寺が末代までに渡って、責任もって故人を供養してくれるのです。
納骨のタイミング
法要とあわせて考えなければならないのが納骨です。故人のお骨をいつまでも自宅に置いておくわけにはいかないものの、お墓がないなどの理由で納骨のタイミングが分からないという人がいるのも事実です。
納骨のタイミングに決まりはない
納骨のタイミングに、決まりはありません。法律も、仏教の教えも、いつまでに埋葬しなければならないとは定めていません。かつての土葬や葬列の慣習にならって、お墓がある家の場合、葬儀当日に行うこともあります。また、お墓が見つからずに10年近くお骨を自宅に置いているという人も少なくありません。
一周忌や三回忌が多い
もっとも多いのは、一周忌や三回忌です。葬儀を済ませたあとにじっくりと墓地や霊園をまわって、気に入ったお墓を購入または建立するのにちょうどいい期間です。また、葬儀後すぐに埋葬するのではなく、少しの期間、住み慣れた家に一緒にいてほしいと思う人も多く、こうした人たちの心の整理がつく期間としても、ちょうどいいようです。
中には七回忌を目安にする人もいます。あまり長く自宅に置きすぎると、遺族の心に区切りがつかなくなるだけでなく、遺族に事故や病気など万が一のことが起こった時に、お骨が置き去りになる心配もあります。そうしたことからも、一周忌や三回忌が選ばれているのかもしれません。
いかがでしたでしょうか。法要は、親戚が集まり、故人や先祖を偲ぶ大切な時間ですし、みんなが集まっている姿に先祖も喜んでくれていることでしょう。あなたの心が整う形で、無理のない法要を営んでほしいと思います。