大切な人が亡くなったとき、残された人は非常に強いショックを受けます。また、葬儀などの「やらなければならないこと」も多く出てきます。そのため、ほとんどすべての企業では就業規則に忌引き(慶弔休暇)の項目を設けています。
忌引きの日数は、故人との関係性によって異なる
忌引き(「忌引」「忌引き休暇」とも。ここでは「忌引き」の表記に統一)とは、家族が亡くなったときに会社や学校を休むことまたそれに伴い取得する休暇を指す言葉です。
実はこの忌引き(含む慶弔休暇)は、労働基準法などの法律によって定められているものではありません。しかし、日本の企業のほとんどすべてが、この忌引きを就業規則のなかに入れ込んでいます。そのためここでは、「忌引きが認められているもの」としてお話をしていきます。
法律で明確に定められているわけではないため、忌引きの日数は企業ごとによって多少異なります。
ただ、「自分から見て近い関係の人であればあるほど、忌引きが長く認められる」という原則は変わりありません。
この期間の間に、通夜や葬儀・告別式を行います。また、人が亡くなった場合は書類手続きなども非常に多く発生しますから、平日に休みが認められるこの忌引きの間にそれらの手続きもしてしまうとよいでしょう。
忌引きの日数は、おおむね以下の通りです。
※実際に忌引きを取得する場合は、必ず取得可能日数を確認すること
忌引きの伝え方と、そのお礼
忌引きをとる場合には、当然会社や学校に連絡しなければなりません。学校への連絡は、電話で「祖母が亡くなりましたので、学校を休ませていただきます」などのように伝えるだけで事足りるでしょう。
しかし会社勤めの人は、やはり周りの人にきちんと伝える工夫をしなければなりません。
【伝え方の基本】
基本的には、まず電話で直属の上司に不幸事があったことを連絡します。冠婚葬祭のなかでも「葬」に関わることは時間を問わずに連絡をしてもよいとされていますが、上司の場合は「身内」ではありませんので、深夜や早朝の電話は避けましょう。
連絡を入れるときには、
・だれが亡くなったか、自分との続柄は何か(例:「祖母」「母」「夫の父」など)
・いつ亡くなったか
・通夜や葬儀の日程と葬儀の形式
・忌引き期間中の連絡先
は最低限伝えなければなりません。またこれに加えて、「自分が喪主を務めるか、それともほかの人が務めるか」「希望する休暇期間」などを書き添えることもあります。
基本的には直属の上司に伝えさえすればその後は上司の方で手配をしてくれるケースが多いかと思われますが、「明日の朝いちばんに取引先との打ち合わせがあり、自分が責任者であった」などのような場合は取引先にも連絡を入れる場合もあります。
その場合は、
・だれが亡くなったか
・〇月×日に予定していた打ち合わせだが、変更してほしい旨
・不在期間の連絡先(サブリーダーなど)
を記して送るとよいでしょう。なお取引先に送る場合は、葬儀の日程などの詳細な情報は記載する必要はありません。
【メールで伝えるのは失礼?】
上記では「電話で連絡をするとしましたが、夜中や早朝などでは難しいこともあるでしょう」としました。深夜や早朝に人が亡くなった場合は、まずは不幸事があった時点でメールで一報を入れて、その後に時間を見て電話で連絡をするとよいでしょう。
また、「電話をかけたがつながらない」「間違いがないように、文字で送りたい」という場合も、メールで伝えても失礼にはなりません。この場合はタイトルを「忌引き」などにして、目につきやすいように工夫しましょう。
忌引きのメールに明確な正解はありませんが、例文として下記を挙げておきます。
忌引きメール例文(直属の上司に送る)
〇〇部長
お世話になっております、▽▽です。
7月18日に父が急逝しました。
急な御連絡になってしまい恐縮ですが、葬儀のために7月19日~7月29日まで忌引きを申請させていただきたく思います。
通夜:7月20日 20時
葬儀・告別式:7月21日 9時
会場:●●
宗派:◇◇
喪主:▽▽
忌引き中のご連絡は、当方の携帯電話(090―××××―××××)までお願いいたします。
大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。
なお、葬儀の詳細についてはまだ決まっていないのであれば「葬儀などについては現在未定です。決まり次第ご連絡差し上げます」などのようにすればよいでしょう。また、詳しくは後述しますが、家族葬・直葬(火葬式)ではない一般葬の場合は、特に葬儀の形式を記す必要はありません。
また葬儀に関する文章は句読点を打たずに作成することが多いのですが、忌引きのメールに関しては何よりもわかりやすさが重視されるため、句読点を用いても構わないでしょう。
当たり前のことですが、忌引きの電話・メールに間違いがあると混乱の元となります。特に日程・会場・連絡先の間違いは大きなトラブルの元となりますから、必ず確認してください。
【忌引き明けのお礼について】
人の死はだれの家にも等しく訪れるものですし、忌引きはだれもとることになるものです。ただそれでも、周りの人が仕事を肩代わりしたり、仕事をフォローしてくれたりしたことは事実です。そのため、忌引きが明けた後はきちんとお礼をするようにしましょう。
お礼の基本は「口頭であいさつを述べる」ですが、お菓子なども一緒にお渡しするとよいでしょう。
このときに選ぶお菓子は、個別包装タイプのもので、ある程度日持ちがするものを選びます。よく選ばれるのは、「焼き菓子類」です。フィナンシェなどが適当でしょう。
高いものを選ぶ必要はなく、1,500円~3.000円くらいのものでよいでしょう。ただし、必ず部内全員にいきわたる個数のものを買い求めます。
家族葬の場合、忌引きの申請はどうする?
最後に、「家族葬と忌引き」について解説していきます。
家族葬は一般葬とは異なり、「遺族が声をかけた人だけを呼んで行う葬儀」のことを言います。そのため、会社関係の人などは原則として参加しません。そして家族葬のマナーとして、「呼ぶ予定のない人には、葬儀を行うことを原則として知らせない」というものがあります。
ただ、ここでジレンマが生じます。
「家族葬だから人に知らせるべきではないけれど、忌引きをとるためには上司などには連絡しなければならない。家族葬だからといって知らせずに休んでしまうと、無断欠勤になってしまう」というものです。
このようなことを避けるためには、「家族が亡くなったことは告げるが、葬儀は家族葬で行うと伝える」という方法があります。
忌引きメール例文(直属の上司に送る)
〇〇部長
お世話になっております、▽▽です。
7月18日に父が急逝しました。
急な御連絡になってしまい恐縮ですが、葬儀のために7月19日~7月29日まで忌引きを申請させていただきたく思います。
葬儀は近親者のみで行います。大変失礼とは存じますが、ご厚志につきましては辞退申し上げます。
忌引き中のご連絡は、当方の携帯電話(090―××××―××××)までお願いいたします。
大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。
などのようにするのです。
こうすれば、「人が亡くなったこと」「家族葬であるため、参列はご遠慮いただくこと」「忌引きを取得すること」を伝えることができます。
人を送るための「忌引き」は、非常に大切なものです。故人としっかり向き合うためにも、忌引きの基礎知識と周りへの配慮を忘れないようにしましょう。