忌中・喪中の違い。その期間に親族がすべきことと控えるべきこと
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身内に不幸が起きてから、その遺族が身を慎む期間のことを、「忌中」や「喪中」と呼びますが、これらの違いについてご存知ですか? 忌中と喪中ではその長さが異なります。また、「身を慎む」とはいうものの具体的にはどのようなことを控えるべきなのでしょうか。この記事では、こうした疑問にお答えするべく、忌中と喪中の違いや、期間の間にすべきことや控えることなどについて詳しく解説いたします。どうぞお役立てください。
もくじ
忌中と喪中とは
忌中や喪中の期間は、社会活動を控え、しっかりと故人を偲び、供養に専念すべきだと言われています。お祝い事への参加を控えるのはもちろんのこと、かつては仕事や農作業などの日常生活も慎むべきとされていました。
伝統的に行われてきた「服喪」「服忌」
戦前までは、喪に服する期間が法律で決められていたほどでした。中国の儒教における社会規範「礼」の中に、家族や親族が亡くなった時、自身との続柄によって喪に服す期間が明確に定められています。これに倣って日本でも服喪の期間が決められます。701年、文武天皇による大宝律令の「喪葬令」に始まり、中世から近世を経て、明治7年に太政官布告の「服忌令」が制定され、終戦まで続くのです。
明治政府による「服忌令」による喪に服する期間は以下の通りです。
なお、ここでいう「忌」とは神社の参拝や家庭内での礼拝を控える期間、「喪」とは精神的に故人を偲ぶ期間とされています。現代は明確に喪に服する期間は定められていませんが、こうした名残が今もなお、私たちの社会の中で慣習として残っています。
忌中とは
現代では、忌中は49日間とされています。これは仏教における四十九日法要を経て忌明けとなると考えられているからで、四十九日法要を「忌明け法要」と呼ぶのもそのためです。仏教では、49日で故人の来世の行き先が決まるとされています。これが日本に伝わり、49日を経て「故人は仏になる」「ご先祖様の仲間入りをする」という風に捉えられるようになります。この期間中、家族は身を慎み、故人の供養に専念すべきとされます。なお、神道の場合は死後50日後の「五十日祭」が忌明けの祭礼となります。
喪中とは
喪中とは、忌中を含む1年間のことを指します。忌が明けると社会復帰をしても構いませんが、心の中では故人のことを大切に偲ぶべきとされています。喪中の1年間は、結婚式などへの参加、神社の祭礼や新年の挨拶(お正月飾りや年賀状)を控える風習はいまも根強く残っています。
どうして身を慎むの?
忌中や喪中の期間、どうして身を慎まなければならないのでしょうか。そこには2つの理由が考えられます。
▶死の穢れを封じ込めるため
ひとつは「死穢」という考え方です。古代から日本では、死者から穢れが発すると考えられ、これを避けて清める風習がありました。死の穢れを共同体全体に及ばせないよう、忌中の期間中、家族は家の中に籠っていたのです。特に神道では死を忌み嫌うため、神社へのお参りや家庭内での礼拝も避けるべきとされています。
▶故人の供養に専念するため
死の穢れは、時間の経過と、その期間中に家族がしっかりと供養を積み重ねることで清められると考えられました。ですから、忌中とは、亡き人としっかりとお別れをするための期間とも言えます。社会活動からの一時的な断絶を作ることで、大切な方との死別をゆっくりと受け入れられるようにしたのです。
忌中・喪中の間に控えるべきこと
ここまで解説してきたように、忌中や喪中にはそれぞれ意味があります。それを踏まえた上で、忌中や喪中の間に控えるべきことをご紹介していきます。
神社への参拝
忌中の期間は神社への参拝は控えます。安産祈願やお宮参り、七五三、成人式などが忌中と重なった場合は極力控えるようにしましょう。どうしても判断がつかない場合は、神社に相談しましょう。
忌が明けると、神社に参拝しても構わないとされています。しかし、実社会では忌中と喪中が混同しているのが実情です。忌中が過ぎているにもかかわらず、不幸が起きた翌年の初詣を控える人は多くいますし、地域の慣習として不幸が起きた家は秋のお祭りに参加すべきでないとするところも多数あります。
神棚の礼拝
自宅の中に神棚を設置している場合、忌明けまで神棚を封じます。身内に不幸が起きたらすぐに「神棚封じ」をします。お供え物をおろし、神棚の前に半紙を垂らし、49日間(神道だと50日間)礼拝を控えます。忌明けを迎えると、半紙を外して、お供え物を並べて、通常通りの礼拝を行います。
祝事や酒宴への参加
結婚式や祝賀パーティーなどの参加も控えるべきとされています。どうしても参加すべきか控えるべきかを迷ったときには、主催者に相談して判断しましょう。参加者の中には忌中の参加に違和感を覚える人もいるかもしれません。
新年のお祝いや挨拶
お正月は新年を祝う行事であるため、お正月飾りや年賀状を控えます。本来は忌明けをしていれば問題ないとされていますが、特に喪中はがき(年賀欠礼)の風習は現代でも根強く残っており、新年を慎ましやかに迎えることが多いようです。
忌中・喪中の中ですべきこと
忌中や喪中の期間に家族がしておくべきことに、どんなことがあるのでしょうか。
位牌・仏壇の準備
忌中の間に位牌の準備をします。仏壇が家にない場合は、あわせて仏壇も購入します。忌明け法要は、故人が仏さまになる大切な儀式で、以降故人の魂は位牌に宿ると考えられます。法要で必ず必要となるものなので、仏壇店などに出向いて購入しましょう。文字彫刻などに多少の時間がかかるため、なるべく早めに手配をおすすめします。
香典返しの手配
葬儀でいただいた香典のお返しは、忌明け法要を無事に済ませたことの報告を兼ねて行われます。そのため、忌中の期間中に香典返しの手配をしておきます。
忌明け法要の準備
忌明け法要は、自宅やお寺の本堂などで行われます。日程と場所が決まり次第、親族や関係者に連絡します。また、忌明け法要を迎えるにあたり、当日のお布施、塔婆やお供え物、参列者に配る引き物、法要後の食事の席などを事前に手配しておきます。
年賀欠礼(喪中はがき)
喪中の方は、新年のお祝いの挨拶となる年賀状を控えます。その代わりに事前に年賀欠礼(喪中はがき)を相手に送り、身内に不幸があったことを伝え、その上で年賀状のやり取りができないことをお詫びします。一般的に年賀状の準備は12月上旬ころから始まるので、11月から12月上旬までに相手に届くよう手配するのがマナーです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。忌中と喪中、その違いとすべきことや控えるべきことについてお分かりいただけましたか?最近では喪に服する期間や、その期間中に控えるべきことが厳密に定められているわけではありません。いわゆる、社会的な強制力がないからこそ、ひとつひとつの行動の中に「故人への想いを忘れていないか?」「相手に不快な思いをさせていないか?」と、丁寧に向き合うことが求められます。